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67.家出9
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「蒼はどうしちゃったんでしょうね~」
吉田は両手で頬杖をつきため息を吐く。
「珍しいよなあ。あいつが無断欠勤なんて……」
尾形はちらりと水野谷を見る。
彼も心配そうにため息を吐いた。
「あいつのことだ。なにかあれば必ず連絡を入れるはずなのに。まさか事件に巻き込まれているとかそういうんじゃないだろうな?」
「まさか。課長、縁起の悪いことを言わないでくださいよ」
「だよな。考えすぎだよな」
「いやだな~。課長は……」
吉田は笑うが、その声は続かない。
ため息に変る。
「でも本当に心配です。なにかあったのかな」
そして星野を見る。
そう言えば。
昨日、久しぶりに圭からの電話があり星野が怒鳴っていたのを聞いた。
星野はとぼけた顔をして外を眺める。
「あいつ。どっか旅行にでも行ってんじゃねえか?」
「な、なに言い出すんです?」
吉田は瞬きをするが、彼は相手にもしない感じで苦笑した。
「関口と喧嘩でもして自棄を起こして海外にでも行ってるんですよ。きっと。まったく。やんちゃ坊主は手に負えませんよねえ。課長?」
星野は水野谷に同意する。
「え?」
「そう思いませんか?課長?」
「あ、ああ」
水野谷は最初、驚いたような顔をしているが、星野の視線の意図を汲み取ったのだろう。
笑顔で頷く。
「本当だな。あんまり無断欠勤が続くようでは本庁に報告して減給ものだぞ。海外の土産くらいでは足らんな」
尾形は「それは無理があるでしょう」と突っ込みを入れようとするが、口を閉ざす。
みんな心配しているのだろう。
このまま彼が無断欠勤をするようであれば、復帰もしにくくなる。
変なかんぐりはせずにそういうことにしておいてやれと言う意味なのだろう。
「みんな、なに言っちゃってんですか?いいんですか?それで」
瞬きをしている三浦を置き去りに尾形も同意する。
「そうですね!ま、あいつがいない分、おれが頑張りますから。その代わり課長。あいつが帰ってきたら仕事押し付けてもいいですよね?」
「お!それはいい。おれもそうしよう」
高田も便乗。
「お前らは本当に冷たい人間だね~。こういうときは持ちつ持たれずだろう?まったく。ひどい先輩だ」
氏家は爆笑する。
それに釣られて水野谷も笑った。
「いいぞ。好きにしろ。勝手に休んでいるあいつが悪いのだ。あいつが頼んでもいない仕事までみんなで片付けてしまえ」
「課長命だぞ!心してかかれ」
星野の号令に一同は「らじゃ!」と声を上げて仕事を始める。
それを見て、訳が分からない三浦も仕事に戻った。
水野谷はため息を吐く。
「なんだって手のかかる奴ばっかりだな……」
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