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70.長い夜8
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「今日も残業かよ」
遅番の星野に声をかけられて、お弁当を頬張っていた三浦は笑う。
「なんだかおれもバリバリのサラリーマンって感じがして楽しいす」
「お前、喜ぶところが違うんじゃねえのか」
呆れる。
蒼はめまいがするとかで仮眠室に行った。
30分経ったら起こすように言われているけど、もう少し放置しておきたい気もする。
その間に夕飯を買いに行った三浦は幸せそうだ。
「お前がマゾだったとはね」
星野の言葉に三浦は爆笑する。
「そんなことないっすよ!おれがマゾなんて……」
「だって追い込むのが好きなタイプなんじゃないのか?お前も蒼と一緒だな」
「へ?」
星野からしたらそうとしか見えない。
「あいつはいつもそうだ。悲劇のヒロインぶって。不幸を呼びたがる」
そんな蒼を助けて上げられない自分も不甲斐ない。
イラついていた。
「そんな。蒼ちゃんは蒼ちゃんで精一杯やっていると思います」
「なんだよ。お前があいつの肩持つなんて珍しいな」
箸を止めて三浦は俯く。
「おれだって男です。泣いている人は放っておけません」
「泣いている?」
「蒼ちゃん、たくさん泣いていました。だからおれがなんとかしてあげようと思っています」
うんと頷いて彼はもぐもぐお弁当を頬張る。
星野は苦笑した。
「思わぬところに味方が出来たな」
「へ?」
「なんでもねーよ。そんな覚悟があるなら、さっさと食べてあいつの分も働け」
「はい!」
お弁当をゴミ箱に入れ、三浦は書類作成に取り掛かる。
明日は月曜日。
休みの日だ。
本庁との打ち合わせは明後日だし。
今日でなんとか目途を付けたい。
せっせとパソコンに向かう三浦を見て星野は更に苦笑した。
「なにもしなくても成長してくもんだよな」
そこにラウンドに行っていた尾形が帰ってくる。
「あれ?まだいるんだ。今日は何時までやるつもりだよ?日曜日なのによ」
「終わるまでは帰りませんよ!」
「あんまり遅くまで残るなよ~。警備の人が大変なんだからさ」
「すみません」
お菓子を片手に寛ぐ尾形。
ちらっと三浦の手元を見て、書類の一つを取り上げる。
「どれ。暇だし。手伝ってやっか。いいでしょう?星野さん」
星野もリモコンでテレビを消し、向き直る。
「そうだな。こういう時こそおれらの出番だろうが」
「いいんですか?」
「ああ。いいよ。重要な書類はお前に任せる。物品一覧とか、どうでもいいのをやってやるから。よこせ」
「はい!」
三人は黙々とパソコンに向かう。
そうこうしている内にばたばたと音がして、蒼が顔を出した。
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