アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
70.長い夜9
-
「もう!30分で起こしてって言ったのに……あれ?」
星野と尾形ペアで真面目に仕事をしている姿は珍しい。
蒼は瞬きをして様子を伺う。
「ほら。お前の書類は残しておいてやったから。さっさと取り掛かれよ。そっちが終わらないとおれのほうもやっかいなんですけど」
星野は書類をひらひらさせて蒼を呼ぶ。
「え?え?星野さんも尾形さんも。手伝ってくれているんですか?」
「可愛い後輩が困っているんだ。当たり前だろう?」
それに便乗して尾形は笑う。
「おれはそら豆のランチでいいぞ」
「酷いっす!結局物を要求する気ですか!!」
三浦は騙されたとばかりに悔しい顔をする。
「いいじゃねーか。蒼と三浦と二人で割り勘すればなんてことないぞ」
「勝手に割り勘にしないでくださいよ」
笑ってしまう。
蒼はもしゃもしゃになった頭を押さえて、自分の机に座る。
「すみません。お二人にもご迷惑をかけてしまって」
「いいってこと。それよりも三浦のことを心配してやれ。限界だと思うぞ」
星野はそっと耳打ちする。
横にいる彼に視線を向けて、蒼はため息だ。
彼がそんなに疲れているなんて気に留めてやることも出来なかったから。
眠い目を擦り擦りウインドウを見つめている彼。
悪いことをしてしまった。
もう少し落ち着いたら開放してあげないと。
そう思った。
それから、数時間。
どうでもいい書類の作成をきっちりこなして、星野と尾形は帰っていた。
時間は22時だ。
今日はもうやめにしないと。
自分はまだやれるけど、三浦が。
そう判断した蒼は席を立って、彼の側に行く。
「三浦。今日はもういいよ」
「え?でも。まだ出来上がっていませんけど」
「いいって。後はおれがやるから。もう帰りな。明日は一日、ゆっくり休むといい」
データをもらおうとメモリースティックを差し出す。
しかし、三浦は首を横に降った。
「もう少しやらせてください。おれ、大丈夫っす」
「なに言ってんだよ」
「蒼ちゃん一人になんて任せておけないですから」
「な……」
失礼しちゃう、そう言いかけて言葉を止める。
三浦はにこにこして蒼を見た。
「さっさとやっちゃいましょうよ!一人より二人って言ったのは蒼ちゃんですよ」
「三浦……」
「ほらほら。蒼ちゃんの分もやってくださいよね。おれ、明日の休みまで出るのは嫌ですよ」
「そうだね。うん」
蒼はおろおろして自分の席に戻る。
なんだか三浦が頼もしく見える。
こんな子だったろうか?
軽い、今風の子。
そういうイメージだったのに。
仕事に関しては真摯だ。
自分も見習わないと。
今回のことで、三浦へのイメージは随分変わっていた。
疲れ切っている彼に負けていられない。
自分もパソコンに向かう。
長い夜になりそうだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
529 / 869