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70.長い夜11
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「無理すんなよ。お前に褒めてもらおうなんて思ってないから」
「ひどいっす!蒼ちゃん」
「酷くないでしょう。ほら。無駄口叩く前に仕事しちゃおう!このままだとお泊りだよ」
「でも」
「でもじゃないでしょう?」
蒼は仕事に戻ろうとパソコンに視線を向ける。
だけど、三浦は納得しないみたい。
じっと蒼のことを見ている。
「なによ」
「話を途中にしないでくださいよ」
「途中ってなに?」
三浦はもぞもぞして、それから椅子のまま蒼の隣に来る。
「おれは」
「?」
「おれは泣いている人はほっとけないです!」
いつになく真剣な表情をされても困る。
蒼は驚いて三浦を見据えた。
「男としてそれだけは譲れないっす。なにがあったんですか?おれが力になります。蒼ちゃんが泣くことがないように頑張りますから」
「な、なに言ってんの。三浦のせいじゃないんだから。キミには関係ないんだから」
ぐいっと腕を掴まれて顔を上げる。
「だったら泣かないでください。おれの前で泣かないでくださいよ」
「ご、ごめん。おれ、どうかしてたんだ」
三浦の前で泣いてしまうなんておかしな話だ。
どうしてだろう。
「三浦には迷惑かけないから。ごめん。このことはもう……」
「もう忘れろってでも言う気ですか?」
「それは……」
「蒼ちゃんはずるいです。理由を言わないなら、おれの前で泣いたりするのは辞めてください」
「ごめん……」
蒼はしゅんとして俯く。
不安定な自分が嫌になった。
「話してくれますよね?どうして蒼ちゃんが泣いているのか」
「三浦」
「おれは相談に乗るのは得意なんです!友達の間でもご意見番で通っているっす!」
ご意見番って。
どうみてもそうは見えない。
思わず笑ってしまう。
「あ!笑いましたね!」
「だって……。三浦がご意見番って。なんだか似合わないんだけど」
「酷いっす~!」
三浦は泣き真似をする。
だけど、蒼は嬉しい。
本当に星音堂の職員たちはみんな自分のことを心配してくれている。
圭とのことがどうなるかなんて分からないけど、自分はしっかりしなければならないのだ。
いつまでもくよくよしていられない。
「分かった!話すから」
「本当っすか?」
「うん」
蒼は苦笑してから三浦を見る。
「さて。どっから話そうね」
「えっと。関口さんって人と喧嘩ってことですか?」
よく覚えているな~と蒼は笑う。
「そうだよ。その関口と喧嘩したの」
「あの~。蒼ちゃん。その関口さんって男性、ですよね?」
「よく分かったね」
どこで知ったのか?
三浦は恥ずかしそうに頭をかく。
「すみません。少し調べました」
「そう」
じゃあ、なにもかも隠すことはないか。
「変だと思ったでしょう?」
下から見上げると、彼は首を横に振った。
「いや、あの。蒼ちゃんには女の子をリードする姿は似合わないっす」
「失礼しちゃうね」
「すみません」
なんだか笑ってしまう。
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