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71.憂鬱な旅2
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レオーネに連れられてやって来たホテルはロンドンでも老舗高級ホテルだった。
セレブが多いロビーは中世ヨーロッパ感が充満している。
ロココ調の細工。
きらびやかではないけど、上品な輝きがあった。
『待ってたよ!蒼!!』
ホテルのロビーに到着するとさっそく嫌な声が響く。
大きくため息を吐くが、男は嬉しそうに駆け寄ってきた。
ショルティ。
圭のこの世の中での天敵である。
静かな雰囲気のロビーは一変する。
彼は圭のところまでやってくると、周囲をきょろきょろと見渡す。
『あれ?蒼は?蒼は?』
今の圭には禁句だ。
『蒼はお前のじゃないッ!』
むっとして睨み返す。
『ちぇ~。蒼も来ると思ったのに。がっかり』
『ショル!』
高塚は再びショルを掴まえて事情を説明する。
しかし、今度は逆効果だった。
『なに!蒼が圭のところから逃げた?』
『し~!!』
ショルは嬉しそうに圭の下に駆けていく。
『おい!これで決まったな!蒼はおれがもらう!』
『ショル……』
『逃げられたなんて終わりだな。お前も!』
あはは、と笑われても返す言葉もない。
事実だから。
圭は大きくため息を吐いて、高塚から部屋のキーをもらう。
「おれ、部屋にいるから。練習のとき呼んで」
さっさと荷物を引っ張ってエレベーターに乗り込む圭。
ショルはつまらなそうな顔をした。
『張り合いがないな。面白くない』
『すみません。本当にショックを受けているんです』
『喧嘩なのか?』
そこでレオーネも話に混ざる。
『違うみたいなんですけど。一緒にいたのでは圭くんが世界に飛び出せなくなるんじゃないかって思ってしまったみたいで。蒼くんの勘違いなんですけどね』
『健気だねえ』
『圭のために蒼は身を引いたってことか。全く。さすが、おれの見込んだ大和撫子だ』
蒼は女性じゃないんですけど。
高塚はそう思う。
『あの二人はお騒がせだからな』
ショルは腕組みをする。
『でもおれたちにはどうしようも出来ないだろう?あの二人の問題だ』
『だけど、この調子で演奏なんて大丈夫なのか?』
『それはこれからのおれたち次第だろうな』
ショルは頷く。
『蒼とのことはあいつの問題だけど、演奏となったら別物だ。プロとして調整するのは当然。それが出来ないなら、そこまでの男だったってことだな』
『お前は冷たいね~』
レオーネは呆れる。
『そこまで面倒見切れるか』
見上げている高塚を見る。
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