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71.憂鬱な旅4
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「どうしてくれるって言うんだよ」
圭は広いベッドに横になっていた。
ぼんやり天井を見つめる。
「蒼のバカ。おれがお前のこと捨てるわけないんだから」
日本から持ってきた蒼の携帯。
慌てて出て行ったから携帯を置いていったのだ。
今頃、これが蒼の手元にあれば連絡を取る術もあったのに。
ここには圭の携帯と、蒼のと二つ揃っていた。
どうしてすれ違いばかりなんだろう。
そんなに自分のことが信じられないのだろうか?
なんだかイラついた。
いっつもそうだ。
一人で早合点して、突っ走っていく。
後ろ向きな思考に代わりはないけど、そうなった時の蒼の行動力といったらない。
いつもはもこもこしてけだもみたいなのに。
もし、次に逢えるのなら、そのネガティブ思考を矯正してやらないといけないな、と思った。
自分の携帯を開いてみる。
中にはけだもを抱いて微笑んでいる蒼の写真が入っていた。
これは試練に違いない。
音楽にかまけていた自分への罰だ。
蒼のことをもっと大切にしてあげないといけないと言う。
だけど、今はそれも叶わない。
蒼がいないのだから。
戻ってきてくれるのだろうか?
彼は。
いや。
真面目な蒼のことだ。
さすがに星音堂には戻っているはずだ。
引っ張ってでも話さないと。
蒼に嫌われたって構わない。
同じく嫌われるのだったらきちんと自分の気持ちを話して嫌われたい。
そう思う。
「よし」
くよくよしていられるか。
このガラコンサートを成功させ、そして日本に帰るのだ。
「心配ばかりかけさせやがって。ぎゃふんと言わせてやるんだから。泣き虫蒼のクセに生意気だ」
圭は携帯を閉じて寝返りを打った。
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