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73.星音堂幽霊事件6
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「白い人が出る?」
数日後のお昼時。
出張で水野谷がいないせいか、事務室は妙に和んでいた。
しかし、その雰囲気は一変する。
話題提供者は三浦だ。
先日の件でひどい目にあっている4人は箸をとめる。
「や、やめろよ~。三浦」
「そうだよ。もう勘弁してよ。その話題」
「だって。本当っすよ!」
三浦は口を尖らせる。
「おれだって幽霊なんて見たことないんですけどね。昨日の遅番のときに、利用者の人がそう話してて」
「なんかの勘違いじゃないの?白い人なんて」
白い人?
蒼は騒動のときに裏庭でみた人影を思い出す。
「そうですよ。また吉田さんなんじゃないですか?」
名指しされた吉田はきょとんとしている。
「な、なに?おれ?なにが?」
「だから。先日だって吉田さんがやったんでしょう?あれ?違うの?」
「なに言ってんの?なに?なんの話?」
吉田は顔色を青くした。
「だから……。おれがトイレに吉田さんを見に行った後、ゴミ捨て場のところから外を覗いたら、裏庭で白い人が……」
蒼の説明に彼は更に顔色をなくす。
「な、なに言ってんだよ?おれはトイレからすぐに資料室に隠れていたし」
「へ?じゃ、じゃあ、おれが見たのって」
「本物じゃね~の?」
話をした本人も蒼白。
事務室内は静まりかえる。
「まじかよ!」
「出るのか?どうすんだよ~。遅番とか恐くて出来ないんだけど!」
尾形もショックの様子だ。
「氏家さん!出るんですか?ここ?」
「まあ、こういう施設にはよくあるような噂って言うのは聞いたことがあるけどな。白い人?そんな話は聞いたことがないな。高田は?聞いている?」
急に振られた彼は首を傾げる。
「いや~。あんまりないですね。ありきたりな無人の部屋からピアノが……とか。廊下に飾られている歴代の演奏家たちの写真が笑うとか、そういうのはありますけど」
彼の言葉に星野は苦笑する。
「ってか、軽くそういう話のほうが恐かったりするな」
「そうか?」
「人間、そういうありきたりものに弱いもんです」
妙に納得している二人。
尾形は割ってはいる。
「そんな悠長な話をしている場合じゃないですよ。これは事件です!」
「事件?」
「そうですよ!」
彼は立ち上がって力説する。
「今までの話を総合すると、これは新手の幽霊事件と言うことになります」
「だから?」
「だから!昔からあるエピソードなら、噂とか、都市伝説とかの類で収まりますけど……。新手と言うことは真実である可能性が高い!」
彼はむむむっと唸る。
「ここ数年で幽霊がここに留まるようなエピソードがあったのかどうか、検証してみたほうがいいんじゃないのかってことですよ!」
尾形の話は飛躍している。
星野はため息を吐いた。
「原因を追究したところでどうなるものでもないんじゃねーのか?お祓いでもする気かよ?」
「でも」
「それよりも。その事実確認をするほうが先決だ」
星野は言い切る。
そして、氏家や高田も同意した。
「蒼が見たって言うなら本当なのかも知れない。今日から遅番メンバーだけじゃなくて、少し増員して監視体制をとってみるって言うのはどうだ?」
「いいですね。高田さん」
蒼にとったら嫌な成り行きだ。
幽霊と関わるなんて思ってもみなかった。
気持ちが沈むのはどういうことなのだろうか。
外はこんなに明るくていい天気なのに。
事務室内は静かで暗かった。
「幽霊騒動が広まれば利用者が激減することは目に見えている。これは業務の一環としてやらなければならないかも知れないな」
「そうですね」
星野の意見に吉田も賛同。
事務室内は非常事態宣言を発令した。
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