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73.星音堂幽霊事件7
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「幽霊事件?」
蒼から事の成り行きを聞いた圭は爆笑する。
「笑い事じゃないよ~」
こっちは死活問題だ。
「人事だと思って」
「そう膨れるなよ。だって、そんなに大騒ぎするほどのことでもないだろう?」
「圭は恐くないの?」
一頻り笑った彼は「そうだな……」と言葉を区切る。
「幽霊ねえ。恐いって言ったら恐い気もするけど、なにせ、今までそういうことに関わったことがないからな~」
「でしょう?おれだってそうだよ。恐い思いしたのは今回が初めてなんだから」
蒼はぶるぶると首を横に振る。
「だけど、その白い人。蒼はその人を見たとき恐かったの?」
「へ?なに?急に」
「だって。ただ星音堂の中をふらふらしている幽霊なんでしょう?そんなに悪いことをするやつには思えないんだけどな」
圭の言葉に考え込んでしまう。
確かに。
あの時は吉田を探していたので、どきどきしていたのは確かだ。
だけど、白い人影を見たとき。
自分は大して恐いと言う思いを抱かなかった気がする。
気のせい?
そう思ったくらいだ。
「悪いことしない幽霊は恐くないのかな?」
ああでもない、こうでもないと考えていた圭は顔を上げる。
「おれはそう思うね」
「そうかな?」
「う~ん。よく分からないけどね。でも、きっとおれが今死んだら。星音堂に出るかもね」
「え?」
「念願のリサイタル。星音堂で開けてないのに死んだら未練が残るよな~」
星音堂に未練か。
蒼は考え込む。
白い人。
星音堂になにか思いがある幽霊なのではないだろうか?
白い人はなにか目的があるのか?
だけど、最近出てきたって言うのは疑問だ。
考えれば考えるほど意味が分からない。
「おれも行ってみようかな?近々」
「へ?」
「なんだかそういうのって気になるし。おれも逢ってみたいな。その白い人」
圭は嬉しそうだ。
久しぶりに星音堂に来るのが楽しみと言う感じだ。
確かに。
最近、忙しくてちっとも顔を出していないから。
こっちは幽霊騒動でそれどころじゃないって言うのに。
なんだか能天気な彼を見ると笑うしかない。
あんまり考え込んでもどうしようもないことだし。
いいか。
蒼はため息を吐く。
明日。
水野谷にこの件を話すと言っていた。
彼はどんな判断を下すのだろうか?
なんだか、妙に気になって胸騒ぎがしていた。
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