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73.星音堂幽霊事件8
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翌日。
結局、昨日はいろいろ考えていたせいで寝坊した。
急いで事務室に入ると、すでに来ていた尾形が水野谷に幽霊事件のことを話していた。
水野谷はコーヒーを飲みながら呆れた顔をしている。
「朝っぱらから神妙な顔で何を言い出すのかと思ったら……」
「課長!これは大問題なんですよ?」
席に座ったまま、星野も付け加える。
「幽霊話が広まると、星音堂の評判にも傷がついちゃいますよ?課長」
「それは困るな」
「でしょう?」
しかし、彼は難しい顔をする。
「しかし、それとこれとは別問題だ。噂は噂だ。一番、長くいるこの事務室職員たちが目撃していないのに、利用者の噂を鵜呑みにするわけにはいかないな」
「課長。蒼が見ているんですから。な?蒼」
そこで遅れてきた蒼に注目が集まる。
彼は慌てて、席に着く。
さも、以前からいました的な態度だ。
水野谷は苦笑する。
「すました顔しなくてもいいぞ。蒼。遅刻しているわけじゃないんだから」
「すみません」
「で?本当に見たの?」
「え!は、はい」
蒼は大きく頷く。
「どこで?」
「ど、どこって。ゴミ捨て場の出入り口で。裏の林のほうでした」
これでどうだ!と言わんばかりに尾形と星野は水野谷を見る。
しかし、彼の反応は薄い。
ふうん、と軽く声を出すと、そのまま黙り込んだ。
「課長!」
「放置しておいていいんですか!?」
事務室内は騒然となる。
あまりのうるささに水野谷は声を上げた。
「うるさい!」
彼の声は響く。
一瞬で事務室内は静寂に戻された。
「そんな下らない話をしている場合か!秋のイベントの準備で忙しいんだから!」
「でも……」
もう面倒くさいと言うところだろう。
彼はため息を吐く。
「お前たちが居残りしたいって言うのなら、自由だからそうすればいい。ただし、それは仕事ありの残業の場合だ。仕事がないやつはとっとと帰れ。仕事があるのであれば居残りは好きにすればいい」
「課長!」
それは実質、遅番以外でも増員して残ってもいいと言う意味だ。
職員たちは嬉しそうに顔を見合わせる。
「ただし。様子を見るのは1週間だ。それ以上、なにも起こらなければこの話はなしだ」
「はい!」
星野も尾形も嬉しそう。
先日、あんなに嫌な目にあったはずなのに。
まったく。
お祭り好きが災いしないといいのだけど。
蒼は不安だ。
こうして盛り上がっている最中も、白い人はこの館のどこかにいるのだろうか?
ふと視線を向けると、水野谷が目に付いた。
彼はじっと一点を見つめている。
なにを見ているのだろうか?
彼の視線の先を追うと、そこは事務室から見える林だった。
なにもないそこ。
もう一度、水野谷に視線を戻す。
彼はすでにパソコンに視線を落としていた。
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