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73.星音堂幽霊事件9
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幽霊厳戒態勢が布かれて5日が経った。
本日の遅番は蒼と吉田である。
しかし、残業と称して他の職員たちは全員、居残りをしていた。
氏家や高田までも残業をするなんて珍しいことであるが、幽霊事件が起きてから、比較的、残っていることが多かった。
あれから明らかに、利用者からの目撃情報は増える一方だった。
職員の中でも、氏家や三浦が白い人を見かけた。
これは本格的に幽霊事件である。
しかし、職員たちが騒いでも、水野谷は取り合うことはなかった。
「ばかばかしい」
それが彼の口癖になっていた。
職員たちが総出で居残りをしていても、彼は定時で帰っていった。
目撃者がいても信じないと言うのはどういうつもりなのだろうか。
蒼には疑問だ。
以前、幽霊関係の話をした時に、彼は「いろいろあった」と話していた。
いろいろな経験をした彼だ。
頭から信じないと言うのは少しおかしい気がした。
今日も水野谷は、しばらく残っていたが、いつの間にか姿を消していた。
もう帰ってしまったのだろうか。
蒼は気になって星野に尋ねる。
しかし、誰も水野谷のことは気にしていない様子だった。
「いつものことだろう?課長が先に帰るのは」
「そうだよ~。どうせ、課長はこの幽霊事件には乗り気じゃないしね」
吉田も同感とばかりに頷く。
「しかし、なんだか課長の様子がおかしくないか?」
ふと氏家が首を傾げた。
「氏家さん。どういう意味です?」
星野の問いに、彼はパソコンを打つ手を休めて、みんなを見渡す。
「なんかさ。昨日なんか大ホールの使用状況を自ら確認しちゃったりして」
細かい作業は下っ端に任せる。
それが水野谷だ。
彼自ら?
珍しいことだ。
高田も声を上げる。
「昨日なんかは、ラウンドしてたしな」
「課長が?」
「幽霊事件のことを気にしているんでしょうかね?」
「そうなのかな~」
水野谷の異様な行動といえば。
蒼だって思い当たる節はある。
「最近、ぼんやりして林を見つめているときが多いですよね」
「そうなのか?」
星野は目を丸くする。
「ええ。なんだかじっと凝視してるときもあれば、物思いに耽っていると言うか」
「珍しいな」
水野谷がおかしくなったのは幽霊事件の辺りからだ。
なにか関係があると言うのだろうか?
「なんかおかしいですよね」
「確かにな」
一同は腕組みをして考え込む。
「課長はなにか知っているんじゃないのかな?この件」
ふと氏家が呟く。
星野も同意する。
「おれもそれを考えていたんです。課長は幽霊話。敢えてしないんですよね。それって、遊び半分で出来ないような経験をしたんじゃないかなって思ってて」
「以前、意味深なことを言っていましたもんね」
吉田も頷く。
「なんか隠しているよな。課長」
「でも、聞いても正直に話してくれるとは思えませんよね」
「それはそうだろう」
氏家は席を立って、みんなを見渡す。
「まあ、もう少し様子を見てみようじゃないか。もし、課長がなにか関係しているのであればボロを出すかも知れない」
それもそうだ。
このままってわけにも行かないのだろうから。
蒼たちは氏家に意見に賛成し、しばらく様子を見ることに決めた。
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