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73.星音堂幽霊事件12
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二人が連れ立って星音堂に行くと、職員玄関のところに人影があった。
「あれ?」
蒼が声を上げると、そこには三浦を抜かした職員が集まっていた。
「なんだ、蒼も戻ってきたの」
星野は苦笑する。
「しかも関口まで」
「お久しぶりです」
圭は嬉しそうに頭を下げる。
蒼なんかよりも、ここの職員が好きなのではないかと思ってしまうほど嬉しそうだ。
「たくましくなったな。関口」
氏家に褒められて、彼は更に笑顔になる。
そこに、三浦もやってきた。
「あれ!?みんないる~」
彼ははしゃいで駆け寄ってくる。
そして、関口を見る。
初対面だ。
「あの?」
「?」
星野は苦笑してお互いを紹介する。
「関口は初めてだよな。こっちが新人の三浦。蒼の後輩ね。んで、こっちは世界的に有名になっているヴァイオリニストの関口。蒼の同居人ね」
「星野さん!そういう情報は余計です!」
蒼は慌てるが遅い。
三浦はへ~っと圭を見つめる。
「三浦くんのお話はかねがね」
圭は苦笑する。
確かに今風の子だ。
蒼が振り回されるわけだ。
そう思った。
「こちらこそ!光栄っす!蒼ちゃんにはいつもお世話になっています」
様子を見守っていた尾形は話を戻す。
「そんな場合じゃないよ。課長だよ。課長」
そうだった、と一同は顔を見合わせる。
「今、事務室を覗きに行ったら課長の姿がないんだよ」
「なんのつもりなのかね?一人で遅番なんて」
「そうですよ。この幽霊騒動の最中におかしいですよ」
星野はみんなの顔を見渡してゆっくり話す。
「よし。こうなったら手分けして探すんだ。課長を。一人になって、なにかするつもりなのかも知れない。見付からないように心してかかれ」
「おう!」
一同はこっそり職員玄関から中に入り込む。
もう薄暗くなる時間だ。
特に星音堂の中は照明の灯っていない場所は暗闇だ。
中は利用者もほとんどいない状態なので、静まり返っていた。
いつも見慣れている場所。
それが、今は落ち着かなかった。
中で手分けして……、そう思った瞬間。
ふと星野が指を立てる。
静かにしろと言う合図だ。
「星野さん?」
「おい。パイプオルガンの音がしないか?」
耳を済ませると、かすかに音が響いている。
「今日は大ホールの利用はなかったはずだ」
「おかしいですね」
吉田の顔色は青い。
「課長が弾いている?」
「まさか」
圭は笑う。
「水野谷課長、音楽はあまり出来ないって言っていたし」
「じゃあ、誰が弾いているんだよ?」
一同は顔を見合わせて、そそくさと大ホールに向かう。
入り口のガラス戸には「大ホール使用中 関係者以外立ち入り禁止」の札が下がっている。
重いガラス戸を押し、そろそろとホワイエに入る。
ここまで来るとはっきりとパイプオルガンの音が響いてきた。
しかも、素人のものとは思えない。
重厚な響き。
「バッハのトッカータとフーガ?」
星野の言葉に一同は顔を見合わせた。
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