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75.嫉妬5
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「やっぱり!」
昨晩の出来事を聞いて、星野は嬉しそうに手を叩く。
「ひどいです。星野さん」
「だって!おれの読み通りじゃん!!」
彼は上機嫌だ。
そんなに喜ぶところではないだろう?
吉田ですら苦笑いだ。
「おれ、三浦とはなんにも関係ないのに。ただの仕事仲間なのに」
いつまでもぐずぐずしている蒼。
言われた三浦はショックだ。
「ただの仕事仲間……っすよね。それはそうっす」
星野は気の毒そうに三浦を見た。
彼は蒼のことを少なからず好きな様子だ。
あからさまに「ただの仕事仲間」宣言をされてしまっては報われないだろう。
「まあまあ。関口の嫉妬深さが浮き彫りにされた事件だ。今後はそういう性格を考慮して行動するんだな。蒼」
尾形は先輩面してアドバイスしているところのようだ。
星野は笑ってしまう。
「でも、一緒に仕事していただけで嫉妬されたんじゃたまったもんじゃないですよ」
「おれたちも嫉妬されてんのかな?」
高田の言葉に、一同は顔を見合わせて笑う。
「んな訳ないじゃないですか!」
「そうだよ……」
しかし、笑いは続かない。
「どうすんだよ?呪いとかかけられてたら……」
「そ、それは困る」
「なんだかお腹の調子が悪いのはそのせいなんですかね?」
吉田と尾形、氏家は顔を見合わせる。
「まさか……」
事務室内は凍りつく。
圭がそんなことをするわけがないと思いつつも、昨日の意地悪は尋常じゃなかった。
蒼もため息だ。
最初の頃はものすごく意地悪だったけど、最近はそんなことがなかったから。
久しぶりに意地悪されてショックだったようだ。
今でもドキドキしている。
「こんにちは~」
異様な空気の事務室に圭が顔を出す。
今日は夜に本番があるから、午後から最後のリハーサルなのだ。
「げ、関口」
「昨日はすみませんでした。みなさんにも迷惑をかけたかも知れませんね」
昨日とは打って変わっての笑顔。
彼は三浦を見る。
「すみませんね。迷惑かけてしまったみたいです」
「あ、い、いえ!」
下心ありありの三浦は、ドギマギだ。
「そんなことあるわけないのに。なんだか疑心暗鬼って言うか。本番前ってすっごく不安定なんですよね。おれ。すみませんでした。三浦さんが、よりにもよって蒼に好意があるなんて勘違いしてしまって」
星野からしたら厭味にしか聞こえない。
圭の意地悪はまだ続いているらしい。
「や、やだなあ。そんな。ねえ?」
どういう意味での同意なのか?
吉田にはさっぱり分からないが、三浦がすがるような目で自分を見てくるので、とりあえず縦に首を振った。
「う、うん。そうそう」
「それじゃ。今日はお世話になります」
圭は爽やかに笑顔を見せ、蒼を見る。
「蒼も頑張るんだよ」
「うん」
颯爽と去っていく彼。
事務室内は異様な空気のまま固まっていた。
そこに水野谷が登場する。
「あれ?なんだ?仕事しろよ~。お前ら」
リサイタルの件で相談に言っていた水野谷はそんな空気なんてお構いなしで席に着く。
「三浦!お茶」
「……」
「三浦!!」
「は、はい!!」
三浦は思い知る。
自分のライバルは、執念深く陰湿な男だと言うことを。
これは警告なのだ。
蒼に手を出すなよ。
さもなくば……。
恐ろしい!
きっとここにはいられないだろう。
自分の人生すら危うくなるかも知れない。
三浦はお茶を煎れながら大きくため息を吐いた。
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