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76.男の意地5
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「星野さんが?」
蒼の話を一通り聞いた圭はおかしそうに笑う。
「笑い事じゃないよ~」
「ごめん。でも、なんだか星野さんらしいって言うか」
「星野さんらしい?」
蒼は首を傾げる。
「星野さんって、あれでいて結構、尽くすタイプなんだから」
「そうなの?」
圭のほうが付き合いは長い。
彼に言わせると当然の成り行きらしかった。
「そうそう。星野さんって入れ込みすぎちゃうんだよ。だから、今まで女の子に逃げられてばっかり」
「意外だなあ」
「そう?」
圭はお茶を飲みつつ、言葉を続ける。
「いつもは飄々としているクセにね。好きな子にはめっぽう絡む。なんでもしてあげたくなっちゃうらしいよ」
「ふうん」
考え込んでしまう。
じっと押し黙っていると、圭は愉快そうに背伸びをする。
「おれなんて、おれはおれのままで好きになってくれる人じゃないとダメだけどね」
どういう意味?
蒼は瞬きをして彼を見る。
「蒼は音楽も含めておれをまるっと好きでいてくれるから。おれは嬉しい」
「圭」
「だから、無理に自分を変えようなんて思わないよ。もし、蒼がおれのことをまるっと好きになれなくなったら。どうしようもないんだろうけどね」
「そんなことないよ。おれは圭のいろいろが好きだから、こうしているだけでいいんだもん」
顔を赤くする蒼。
それを優しく見つめる。
本当は嘘だ。
自分も星野と一緒だ。
蒼に嫌われそうになったらどうするだろう?
なにがなんでも彼に好かれるように努力することだろう。
無理をしても、彼の側にいたい。
そう思っているのだから。
「嘘ばっかり」
「なんで?」
「圭はすぐ無理しそうだもん。おれはそんなことないよ。どんな形になってもおれは圭のことが好きなんだから」
「蒼」
なんだ。
蒼のほうが上手か。
圭は苦笑する。
「まったく。蒼は……」
「なに?」
「なんでもないって」
蒼には救われてばっかりだ。
「圭は?」
「ん?」
「圭はおれがどんなことになっても好きでいてくれる?」
なにを今更。
「好きだよ。蒼のこと」
「よかった」
へへっと笑う。
なにもない日常だけど、二人にとったらこれが一番なのだ。
幸せな時間。
いつまでも続いて欲しい時間でもある。
二人の間であくびをしているけだもを笑ってしまう。
「どれ。明日も早いし。寝ようか」
「うん」
二人のやり取りに寝る気配を察知したのか。
けだもは嬉しそうに寝室にかけていく。
今日も無事、一日が終わった。
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