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77.二人の関係6
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秋の気配が漂う星音堂。
なにもない、平和な一日だった。
これからの星音堂はイベント目白押しだった。
関口圭の凱旋コンサート。
市制100周年記念音楽祭。
毎年恒例の星音堂文化祭。
冬までの短い期間の中で、こんなに大きなイベントが続くことは珍しいことでもある。
星音堂文化祭。
去年はミュージカルを行って、大好評だったが、今年はそれどころではない。
そこまで手の込んだことは到底無理に感じられた。
去年が好評だったので、市から予算をもらった関係上、そうそうは手が抜けないし。
今日はその打ち合わせでなんだかんだと時間が過ぎている状況だった。
「去年、奥の手の着ぐるみを出しちゃいましたからねえ。どうするんです?今年は」
尾形はコーヒーを飲みながら顔をしかめる。
「そうだよねえ。今年も着ぐるみではマンネリだし」
「じゃあ顔出しだろう」
水野谷は頷く。
「は?」
「今年は顔を出してのミュージカルだ」
「またやる気してるんですか!?」
「時間が足りませんよ!!」
例年であれば、文化祭は10月下旬から11月初旬。
しかし、今年は様々なイベントが入っているので、例年よりも遅く、12月初旬に行う予定になっている。
「問題ないだろう?まだ2ヶ月はある」
そう言われても……。
確かに、去年は楽しく、充実感も得られた。
だけど、あの練習は厳しいものがある。
一同が渋るのを他所に、水野谷は一冊の本を取り出した。
「実は、もう依頼済みなんだ」
「は?」
「今年も先生にお願いしておいたから」
「また!!」
吉田は呆れて顔を押さえる。
「課長!学祭じゃないんですから!!」
「そう言ったって好きなんだろう?お前たちも」
「そ、それは……」
嫌いとはいえないのが本音だろう。
「去年はブレーメンの音楽隊だったからな」
「今年はなにを依頼しているんですか?」
「シンデレラだ」
「ぶ~!!」
水野谷の言葉に一同は吹き出す。
「な、なんでそんなネタ!?」
「それに走ったら終わりですからッ!」
吉田と星野は大騒ぎ。
高田と氏家も不安そうだ。
「課長、どうしちゃったんです?誰がシンデレラをやるって言うんです?」
「それは決まっているだろうが……」
水野谷の視線の先。
そこには食いしん坊の尾形がいた。
「お、おれ!?」
職員は一斉に彼を見る。
そして爆笑した。
「課長!!」
「そりゃないっすよ!」
「そうですよ!ウケ狙いってことですか!?」
笑われた尾形は大騒ぎだ。
「ひどいっす!おれだってシンデレラくらい出来ますよ!!」
「お、言ったな」
水野谷は茶化す。
「でも尾形さんは絶対に魔法使いですよ。魔法使い!」
吉田は力を入れて言う。
「なんだよ~。そういうお前は意地悪姉さんだろう?」
反撃した尾形の言葉に星野も便乗する。
「本当だ!吉田とおれが意地悪姉さんで、高田さんが意地悪母さんだな」
「おれかよ!」
キャスティングだけで、なぜこんなに盛り上がるのだろうか。
蒼は苦笑して様子を伺っていた。
三浦は文化祭事体が始めてだから、よく分からないらしい。
傍観者になっている。
「課長は真面目だし。お城のお付の人ですよね」
「そうだな。おれはそういうほうが合う」
「じゃあ、お付1が課長でお付2は氏家さん」
「ねずみはどうすんだよ?」
星野は指を折る。
「ねずみなんていましたっけ?」
「お前、シンデレラ知らないの?ねずみはシンデレラのお友達なんだよ!」
蒼の問いに星野はぶうぶう文句を言う。
よく知っているものだ。
シンデレラなんて、遠い昔の話だ。
寝る前に空に読んでもらった記憶がうっすらあるくらいの話だ。
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