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77.二人の関係7
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「お付は一人でいいじゃないですか。氏家さんはねずみですよ」
「おいおい。尾形。お前、失礼だな」
「いいじゃないですか。ねずみは重要なキャラですよ!」
「魔法使いもな」
なんとも低レベルな言い争いである。
「ねずみは蒼でもいいんじゃないのか?」
「おれ?」
蒼は星野を見る。
「ちまっとしていて、蒼はねずみって感じだろう」
「ねずみが一番かも知れないな」
「蒼ねずみ」
「吉田さん!すぐそうやって名前と動物をくっつけないでくださいよ」
「いいじゃん~。蒼ねずみ」
蒼は憮然とした顔をする。
不満なようだ。
「じゃあ、シンデレラと王子様はどうするんです?」
尾形の問いに一同は顔をしかめる。
「う~ん。どうしよう?」
「家来、二人もいらないじゃないですか。そうだ!王子様は課長で、シンデレラが……」
吉田はちらっと三浦を見る。
「おれ?おれっすか?」
三浦は目をパチパチしてから、首を横に振る。
「お、おかしいっすよ!」
慌てている彼を見て、星野も頭を抱える。
「そうだな~。確かに。おかしいよな。三浦がシンデレラじゃあ」
「そ、そうでしょう?ねえ、課長」
彼はおろおろしていて情けない。
なんだか笑ってしまった。
「じゃあ、おれの独断と偏見でのキャスティングを発表してやろうか?」
少し離れた席にいる水野谷はニヤニヤしている。
「なんですか?」
「課長のキャスティング?」
ざわざわしていた事務室は一気に静まり返る。
「まず。魔法使いは尾形」
そこは変わらないらしい。
一同はくすくす笑う。
「ねずみは吉田」
「おれっすか!?」
「そうそう。意地悪姉二人は星野と高田」
「おれが!?」
「妥当だな」
それぞれの感想は無視して、水野谷はどんどん進める。
「意地悪母親は氏家さん。家来はおれ」
「じゃあ、シンデレラは……」
「もちろん。蒼だろう?王子は三浦な。以上」
言い切った彼はすごく嬉しそうだ。
蒼は断然抗議だ。
「課長!ひどいですよ!ほら、三浦もなんか言ってやりなよ!!」
慌てて三浦を見る。
しかし、彼はなんだか恥ずかしそうにもじもじしているばかりだ。
「はあ?なに?なんなの?」
「いや、おれ。蒼ちゃんがシンデレラならやってもいいかなって……」
「なに言っちゃってんの!?」
蒼は顔を赤くして慌てている。
それを星野がなだめた。
「そう焦るなよ。なにもこれで決定じゃないんだから」
「そ、そうですよね。うん。そうだ」
動揺を隠そうと、自分に言い聞かせるように彼は何度も呟いて椅子に座る。
星野はにこにこして続ける。
「おれは吉田がシンデレラで課長が王子って言うのもいいと思うんですけど」
「ええ!?」
「は!?」
今度は二人がわたわたする番だ。
「星野!なに言ってんだよ?おれなんて王子とか出来る年じゃない」
「そうっすか~?」
「そうですよ!おれだってシンデレラなんて無理ですから」
「でも、去年だって高音域だったから鶏役だったじゃないか。吉田が一番だぞ」
「そんな!」
吉田は必死だ。
そんな様子が面白い。
人事だと笑えてしまうのが人間だ。
蒼も一緒になって笑っている。
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