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79.もう一人の来訪者2
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その日。
安齋はイラついていた。
市制100周年記念音楽祭が近いのだ。
自分の担当である。
成功するかどうか。
ものすごいプレッシャーだった。
市長も期待している。
自分の首が掛かっているようなものだ。
それに。
自分はこの日のために3年間も頑張ってきたのだ。
神経質になるのも頷ける。
そのせいで、昨日は吉田と大喧嘩だ。
機嫌の悪い自分が一方的に吉田に八つ当たりをして、彼が泣くと言ういつものパターンだから、喧嘩と言うには語弊があるが……。
しょぼんとして出勤していった吉田に、素直に謝れない自分にも苛立っていた。
朝から「近寄るな」オーラを出していたせいで、同僚も声をかけてこないし。
むっとしながら午前中を終えようとしていた。
その時。
受付のほうの入り口から変な外人が一人入ってきた。
しかも大きな声で意味不明なことを話している。
市役所職員と言えど、英語に明るい職員は少ない。
なにやら訊ねられて、視線をそらして去っていく人が多かった。
耳障りな声。
安齋はイライラが絶頂になる。
面倒はすぐに処理。
自分のいいように環境を整えようとする防衛反応が働いたようだ。
席を立とうと腰を上げる。
と、隣にいた室長である保住が動いた。
「室長」
「騒がしいな」
自分よりも小柄な彼。
さっきまでは書類を眺めていて、いるんだかいないんだか分からないくらい大人しかったのに。
動き出すと早い。
安齋よりも先に受付から彼に声をかける。
『どうしました?』
外人は英語が分かる人がいて助かった、とばかりに駆け寄ってくる。
随分大きな男だった。
そして、整った顔。
なんだか、どこかで見たことがある気がするが……安齋から見れば外人はみんな同じに見えるものだ。
気のせいだろう。
外人は身振り手振りで一生懸命に話す。
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