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79.もう一人の来訪者4
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星音堂の事務室は静まり返っていた。
何故って?
それは昼下がりだからだ。
なにせ、みんなオネムタイムだ。
文化祭の案でも練っていたのだろう。
珍しく、水野谷も眠そうな顔をしていた。
蒼も同様である。
昨日の晩はレオーネたちに振り回されて散々だった。
せっかくの夜だったのに。
結局はいつもと同じ、いや、いつもよりも遅くなった。
眠くて仕方がない。
圭はいい。
きっとゆっくり寝ていたに違いない。
そう思っていた。
まさか、レオーネたちに振り回されているなんて思いもよらずに……。
「おい。蒼。うとうとしているぞ」
つつっと肘でつつかれて視線を上げる。
星野だって眠そうだ。
「星野さんだって人のことは言えないんですからね」
「そう言うなよ。おれはうまく寝ているんだから」
「うまくないですよ。すっかりお見通しなんですから。ねえ、課長……」
ふと視線をやって言葉が止まる。
水野谷も瞳を閉じていたからだ。
「あれ!珍しく課長が寝ていますね」
「本当だ」
二人のひそひそ声にうとうとしていた他の職員たちも目を覚ます。
「珍しいな。課長が」
「課長もお疲れなんだろう。おれたちが面倒ばかりかけるからな」
氏家の言葉には苦笑するしかない。
くすくす笑っていると、ふと水野谷が目を覚ます。
「なんだ?」
「課長~」
「寝ちゃダメですよ~」
いつも怒られている吉田はここぞとばかりに揚げ足を取る。
「おれは寝ていないぞ」
「嘘ですよ~。絶対寝ていました」
「寝ていません」
「寝ていました」
「寝ていません!」
子どもの押し問答みたいだ。
周りにいた職員は笑ってみている。
「吉田は、本当に人のことになると生き生きするよな」
「そんなことないですよ。ダメなものはダメなんですから」
尾形は呆れる。
「自分のことは棚に上げちゃってさ」
「いいんです!」
言い切る根拠はよく分からないが、吉田は機嫌が悪い。
安齋と喧嘩でもしたのだろうか?
朝からむんむんしているのに違いなかった。
「ほらほら。目が覚めただろう?仕事だ、仕事」
水野谷が手を叩き、一同が渋々仕事に戻ろうとしたとき。
来客が現れる。
保住に引き連れられたショルティである。
『蒼!!!』
辺りに響き渡る大きな声。
事務室は一瞬、動きを止める。
視線を向けると、入り口から手を大きく振って彼が顔を出す。
「ショ、ショル?」
『蒼!やっと逢えたね』
彼は一目散に駆けてきて、蒼をぎゅうぎゅうする。
『相変わらず小さいねえ、あ、そうそう』
彼は咳払いをすると、ゆっくり話す。
「コンニチハ。蒼」
「あれ!?ショル、日本語」
彼は照れくさそうに笑う。
『少し勉強中。もうすぐ出来るようになるよ。そしたら蒼とも日本語で話しが出来るね』
『偉いね。ショル』
『蒼に褒められると嬉しい』
彼はにっこにこだ。
それをぽかんと見ている職員は情けない。
星野も同様にぽかんとしていたが、ふと見覚えがあると思い出す。
「あれ!?ショルティ?新星マエストロ?」
星野の言葉に吉田たちも頷く。
「王子様!」
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