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81.不幸は突然に1
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ショルティが保住の妹と付き合い出したことはすぐに広まった。
もちろん、噂の元凶は本人である。
ぺらぺらとあちこちで言いふらしているのだ。
関係者なら、耳に入らないわけがない。
圭のところにも事実確認の電話が数本入る。
「おれに聞かれたってなにも分からないんだって!」
乱暴に受話器を落とす。
「意味が分からん。直接本人に確認すればいいだろうが……」
「本人に聞いても意味不明だから圭くんのところに連絡が来るんだよ」
ソファに座って様子を伺っていた高塚が苦笑する。
「おれはあいつの情報係じゃないっつーの!なにも公式で発表したいんだったらマネージャーでも通して発表すればいい話だ」
「おれもいつかはそんな仕事もしなくちゃいけなくなるのかなあ」
「お前はいいんだよ!おれは蒼とのことを公式に発表するつもりはないんだから」
蒼に迷惑をかけるのが一番嫌だ。
だから。
蒼とのことは絶対に伏せなければならない。
マスコミなんてひどい人種だ。
都合がいいときはちやほやするが、突然、掌を返したような仕打ちをすることもある。
マスコミのせいで音楽家生命を絶たれた人材も多いのだ。
圭は嫌いだった。
マスコミと言うものが。
「うまく利用すればもっとチャンスがあるのにい」
「そういうものを利用して成功するんだったらやめたほうがいいな」
「頑固者」
「頑固で結構」
高塚は膨れる。
「それよりも、なにしに来たんだよ?ちゃんとショルのお守もしろって言っていただろう?レオーネとかはどうした?」
「レオーネとブルーノは二人で箱根の温泉に一泊してからこっちに戻ってくるって。ショルは知らないよ。保住さんって子ともうべったりで……。どこに行ったのかなんておれにはわからない」
「あいつのマネージャーはなにしてんだよ」
圭は呆れて、椅子に腰を下ろす。
「ショル。忙しいスケジュールを抜け出して日本に来ていたみたいだよ?マネージャーさんには連絡が取れていて、今日にでも来日するって言っていたけど……」
「来たらきっちり指導してもらわないとな。あの暴れん坊を」
「そういう圭くんは平気?ガラコンサートは明後日だけど……」
そう言われると痛い。
結局、連日の騒動で練習をしても集中できないのだ。
本当に大丈夫なのだろうか?
「今日から始める。おれだってプロだ。なんとか間に合わせてみせるさ」
「そういうところはあまり心配してないけどね」
「じゃあ聞くなよ」
「ごめん」
高塚は苦笑して立ち上がる。
「今日は会場を見せてもらって、主催側との打ち合わせをしてくるね。お昼には帰ってくるね」
「分かった」
「行ってきます~」
高塚は元気だ。
彼。
こちらに居るときはすっかりこの家を拠点にしている。
最初の頃は遠慮してホテルを取っていたが、経費を考えると、ここに寝泊りしたほうがはるかに安いのだ。
食費と称していくらか持ってくるが、そんなものは受け取れない。
むしろ、自分のためにここに滞在してもらっているのだ。
こちらでなんとかするほうがいいだろうと言うことになった。
この家のかってもすっかり分かった高塚。
もうここの住人ばりの図々しさだ。
近所の人からしたら不思議なうちだろう。
男所帯。
しかも、たまに出入りするのは怪しい外国人。
なんの人だって感じだ。
これではアパートのときと大して変わらない気がした。
大きくため息を吐いて、視線を向けると、回覧板が目に付いた。
回覧板。
そういえば回っているんだよな?
圭は首を傾げる。
家を不在にすることの多い圭には馴染みがないものだ。
いつもは蒼が回してくれているみたいだし。
そっと手に取って中身を見てみる。
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