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83.ガラコンサート1
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当日。
蒼は重い気持ちのまま、星音堂に出勤した。
本日も日勤にしてもらっていたので、18時開演のガラコンサートには間に合う予定だ。
とは言っても、星音堂が生み出した音楽家でもある圭のコンサートだ。
結局、水野谷の特別な計らいもあって、遅番である尾形と吉田も演奏中は、こっそり様子を見に行ってもいいことになっていた。
「今日はとうとうガラコンサートだな」
事情を知らない吉田は嬉しそうに話す。
「蒼ちゃんも見に行くんですか?」
三浦の問いにはっとして、大きく頷く。
「うん……」
「大丈夫ですか?蒼ちゃん」
「うん。大丈夫」
ぼんやりしていた。
いろいろ考えてしまうことは多い。
蒼にとったらコンサートがどうこうなるよりも、圭のことが心配だった。
大丈夫だろうか?
ショルやレオーネには内緒とか言っていたが……。
と、言うことは、本日のゲネプロは演奏をすると言うことである。
傷は開かないだろうか?
痛みはどうだろうか?
不安ばかり掻き立てられた。
「蒼が緊張してどうすんだよ?今日は関口の晴れ舞台だろう?」
高田は茶々を入れる。
「え!あはは……。そうですよね。やだな。おれ」
「顔色悪いぞ?」
氏家は心配そうだ。
「星野も具合が悪いし。お前まで倒れられたら大変だ」
「いや。おれは平気なんです。あ、そうだ。星野さんはどうなんでしょうかね?」
話題をそらそうとして、上ずった声を上げると、突然、大きな声が響いた。
「元気だ!」
「へ?」
「あれ?」
一同が視線を向けた先には……。
星野がいた。
彼は側の壁に手をついて立っている。
「星野さん!?」
「大丈夫なんですか?」
彼は腰に手を当てつつ、自分の席に座る。
「寝てられるかよ!このクソ忙しいときに」
「だけど……」
「昨日、医者でもらってきたコルセットしたら、結構平気みたいだ。動き出しとかがひどいけど、座ってしまえばなんともないから」
パソコンを開きながら話をする星野。
みんなは心配そうだ。
そこに、本日のコンサートの最終確認から戻ってきた水野谷が顔を出す。
「あれ?星野。明日まで休みなんじゃないのか?」
「課長!おれに仕事をやらせてください。頼みますから」
水野谷は面食らっていたが、苦笑する。
「お前からそんな言葉を聞くなんて思ってもみなかったな。いいだろう。無理はするな」
「ありがとうございます!」
サボることばっかりの星野が、どういうことなのだろうか?
尾形と吉田は愉快そうに見守っていたが、黙々と仕事を始める星野を見て、自分たちも仕事を始める。
蒼も同様だ。
「無理しないでくださいね」
ぼそっと星野に声をかけてから仕事に戻ろうとするが、彼の呟きに手を止める。
「関口も男やってんだ。おれだって出来ないことはないんだっつーの」
「星野さん……」
それ以降、まるっきり口を利かない星野。
蒼は諦めて、自分の机に視線を戻す。
置時計は10時を過ぎたところ。
そろそろ、みんな集まってきている頃だろう。
大丈夫だろうか?
圭は……。
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