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83.ガラコンサート2
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本日のコンサートの日程は至って単純なものだ。
第一部は圭をはじめとする入賞者のソロステージ。
一人10分の持ち時間でピアノとの曲を演奏する。
第二部はショル率いるオーケストラとの協奏曲。
協奏曲は、それぞれの地元出身者が努めることになっている。
イタリアではレオーネ。
イギリスではビクトリアが務めた。
そのため、今回の主役は圭である。
圭にとったら、その長丁場がしんどいものになってしまうとは思いもよらなかった。
午前中はショルとオーケストラの調整が入ることになっていたので、圭たちは個人の持ち時間の練習に入る。
レオーネはブルーノに伴奏をお願いできるのせいか上機嫌。
しかし、圭の場合は、東野が相棒と言うこともあって、これもまた気が重かった。
割り当ての第二練習室に入ると、彼女はすでにやってきていて練習をしているところだった。
「あ、圭くん。おはよう」
彼女はにこやかに挨拶をする。
「東野。今日はよろしく」
「こちらこそ。いろいろあったのに、また選んでくれて嬉しいな」
別に圭が選んだわけでもない。
高塚が手配しただけ。
でも、彼女の伴奏で弾き難さはなかったから適任であることには間違いがなかった。
「先日は本当にお世話になって。ごめんね」
「いや。なにも世話なんて」
「ううん。あのおかげで、川越先生とはまた逢うようになって……」
川越。
久しぶりに聞く嫌な男の名前に顔をしかめる。
「具合でも悪い?大丈夫?」
「いや。少し緊張しているだけだ。さっそくあわせてもらえる?久しぶりだし」
「そうね」
話も途中にして、圭は愛器を取り上げる。
受傷して二日。
一日目に無理をして弾いたことも影響しているかも知れないが、二日目はまるまる楽器を持たなかった。
そのおかげか?
傷のほうは随分楽な気がする。
辛いことには変わらないが、少なくとも、みんなの前で醜態をさらさずにはいられそうな感じがした。
弦を調整し、音を確かめる。
今日は調子がいい気がした。
ヴァイオリンも自分を応援してくれているのだろうか?
ここ、数年の中でも断然に調子がいい。
大丈夫だ。
絶対。
大きく息を吐いて、圭は楽器を構えた。
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