アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
83.ガラコンサート10
-
客席でなんてとっても見ていられなかった。
休憩時間。
いてもたっても居られなくなった蒼は、ステージ裏にやってくる。
ハラハラして見守っていた高塚は、涙いっぱいの蒼にびっくりした。
もう大泣きである。
平然とステージ上で演奏をこなしている圭よりも、蒼のほうが不憫である。
みんなに慰められて、大変だった。
圭だけでなく、蒼もお荷物みたいなものである。
一緒に見ていたレオーネも笑いを堪えていた。
超大作の協奏曲を終え、ほっとしたのか。
拍手の中、圭はほとんど意識がなかった。
観客からは見えなかったかも知れないけど、ステージ裏からはよく見えた。
蒼はおろおろして出て行きそうになったけど、ショルが機転を利かせて、圭の腕を掴み、観客からは見えないようにステージ裏までつれてきてくれた。
「おい!救急車!」
「いや、近いんだからそのまま連れて行こう!」
バタバタしている舞台袖。
床に寝かされている圭を蒼はいつまでも呼ぶ。
「圭!圭ってば!目覚ましてよ!!ちょっと!」
薄れている意識。
蒼の声で引き戻される。
「あ、お?」
「ちょっと!い、嫌だよ!死んじゃうの?ダメ!」
「おれさ」
「うん……」
「蒼と一緒に温泉に行きたい……」
「はいッ!?」
蒼はぽかんとする。
意味が分からない。
再び意識が混濁する圭。
もうなにを話してもダメみたいだった。
最後に言う言葉か?
って言うか、本当に最後なの?
手首の脈を取ってみる。
拍動は弱いけど、リズミカルに脈打っている。
少しほっとした。
死ぬわけではないのだ。
息もしている。
ただ、ちょっと疲れただけ?
「蒼!ちょっとどいて!運ぶから」
いつの間にか騒ぎを聞きつけた尾形と高田が担架を持ってきていた。
担架が出動するなんて、星音堂始まって以来のことかも知れない。
こんなものがあることすら知らなかった。
「蒼、運ぶぞ!」
「はい!」
みんな大慌てで圭を担架に乗せ、そのまま近所の総合病院に連れて行く。
以前、蒼が交通事故に遭って運び込まれた病院だ。
突然の来院者に救急外来は戸惑いを隠せない様子だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
634 / 869