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84.暗闇3
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「関口の調子はどうなんだ?」
翌日。
昼食の時間なのに、病院に出て行かない蒼を見て星野が声をかけてくる。
お弁当を箸でいじっていた蒼は暗い。
「なんだか、どうにも」
「悪いのか?」
星野の声に他の職員も蒼を注視する。
気になるところだろう。
「腕のほうはなんとか。明日には退院するんです」
「なら、そんな暗い顔をすることないだろう?」
「そうなんですけどね……」
「ですけどねって?」
吉田が口を挟む。
「精神的にダメージ受けちゃっているみたいで」
「精神的?」
蒼は説明を続ける。
「先生は安静にすれば大丈夫って言ってくれているんですけど……。当の本人からしたら、これからどうなるのか心配なんです。元の通りになるのか?弾けると言っても程度がありますからね」
彼の話に星野はため息を吐く。
「無理したのは自分だろうが。こうなることは目に見えていたじゃないか。それを押しても頑張るって言ったんだから。いじけるなら一人でいじければいいのに」
「どうせ蒼に八つ当たりでもしているんじゃないの?」
尾形の推理はご名答だ。
蒼は苦笑する。
「いいんですよ。当たるところもないと、圭も辛いんですから」
「そんなこと言っちゃって。お前があいつの鬱憤を受け止められるほど度量が大きいとは思えないね」
それは言えている。
圭よりも打たれ弱い男だ。
「星野さん。ひどいことを言いますね」
「おれはお前のことを心配してやって……」
そこで口をつぐむ。
尾形はそんな星野を茶化す。
「ひゅ~♪やっぱり、星野さんは、意地悪ばっかりしているように見えて、蒼のこと心配してあげているんじゃないですか」
「ち、違げえよ」
「またまた~」
そう。
心配してくれている人がいるから。
蒼は平気。
家出した事件のときだって、みんなが心配して支えてくれたから。
圭だけじゃないって教えてくれたから頑張れた。
今回もそう。
こうして心配してくれる人がいるだけで、蒼はなんだか元気が出る。
なんとかしてみせる。
自分が。
不安な圭を、なんとかしてみせる。
そう決心を固くさせた。
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