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85.主夫の1日9
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ガラガラ。
玄関が開く音がした。
夕飯を先に終えて、毛づくろいをしていたけだもが駆けていく。
「ただいま~」
蒼だ。
圭も一緒。
けだもと同じだ。
せかせかと出て行くと、蒼は疲れた顔をしていた。
「お疲れ様」
「ただいま~。今日はどうもね。みんな喜んでいたよ。おせんべい」
「そう。よかった」
蒼のかばんを持って、後ろを付いていく自分は本当に奥様だ。
なんだか腑に落ちない。
本当だったら逆がいいな……。
そう思う。
自分が帰宅して。
蒼がエプロンして出てきてくれたら。
結構、嬉しいのに。
なんだか悲しくなってくる。
「大丈夫?圭?」
ふと気付くと、蒼がネクタイを緩めながら、心配そうに視線を寄越してきた。
「へ!?だ、大丈夫。ちょっと疲れただけ」
「そうだよねえ。圭も主夫みたいに一日家事してるんだもんね。ごめんね。全部やってもらっちゃって」
「いいんだ。蒼も疲れただろう。お風呂に入ったら?」
「ううん。ご飯食べちゃおうよ。おれも手伝うから」
自分は疲れているだろうに。
圭のことを気遣ってくれているのだろうか?
そういうちょっとした蒼の優しさが、ふとした時に実感できて圭は嬉しい。
もぞもぞと着替えをしている蒼を引き寄せる。
「圭?」
「いいから。お風呂入っちゃいなって!」
「で、でも」
「よし!おれが背中を流してやろう」
「ええ!?い、いいって!」
一緒にお風呂に入る機会って少ない。
蒼は赤面している。
「左手は傷の癒着も進んでいるし。力を加えなければ濡らしても大丈夫って言われているからな」
「そ、そういう意味じゃなくて」
「なに恥ずかしがってるんだよ?」
「だって……」
もじもじしている蒼はかわいい。
圭は否応なしに彼を連行する。
「蒼とゆっくりした時間を過ごせるなんて久しぶりじゃん。いいの、いいの」
「でも!」
「文句なし。いいじゃん。頭洗ってあげるよ」
「頭!?」
その言葉に蒼はほわんとした顔をする。
頭を洗ってもらうのは気持ちがいいから好きだ。
誘惑に負ける蒼。
「じゃあ、いいよ」
「よし!二人で入れば光熱費も節約できるからね」
「結局はそこ!?圭。本当に主夫になっちゃってんじゃないの?」
「へ?」
本人は気付いていない。
家事をしながら、お茶飲みに行ったり、昼ドラを見たり、スーパーのタイムサービスに乱入したり、高熱費を心配したり。
もう完全に主夫である。
「そっかな?」
「そうだよ!案外、主夫に向いてるんじゃない?」
桜と同意見。
首を傾げている圭。
本当に笑ってしまった。
男でも、家事なんか一切こなさないって言う人もいるけど。
圭みたいにマメになんでもしてくれるのだから文句はなしか。
圭の意外な一面を見た蒼であった。
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