アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
87.猛獣使いと猿山3
-
「そう怒らなくてもいいじゃない。ピリピリしていたら、うまく行くものが台無しになってしまうではないか」
「ですが……」
このだらけようと言ったらなんだ?
ここが自分の育った場所なのかと思うとがっかりする。
「仕事の出来る状態になっていない人たちと話し合っても効率が悪いだけです。おれはホールの確認に行ってきますから、その間にきちんと話し合いが出来る状況にしておいてください!」
ぴしゃりっと言い渡し、そして、大堀を睨む。
「なにもさっとしている!会場の確認をするんだ。大堀も来い」
「そんなに怒らないでよ~。恐いんだから……」
大堀はしゅんとなって後を付いていった。
それを見送って、星野は笑うしかない。
「すみません。おれらがだらしないばっかりに。眠っていた獅子を起こしちまったみたいだ」
「いやいや。元々、今朝から起きて大暴れしていた。獲物を見つけて牙を剥いただけだな」
保住は気にもせずに笑顔を見せる。
「あれで、プレッシャーに弱い男だからな。緊張しているのだろう」
安齋がプレッシャーに弱い?
蒼はそんなことを平然と言って退ける保住はすごいと思った。
氏家は苦笑して、保住と田口をソファに座らせる。
「すみません。そうは言っても、本当に打ち合わせの雰囲気ではないですからね。座ってお待ちください。今、片付けますから」
三浦は慣れない手つきでコーヒーを出す。
「キミが一番新人なの?」
「え?はい!今年からここに来ました」
「へ~」
保住は三浦と蒼を見比べる。
「おれはてっきり、蒼が新人なのかと思っていた」
「よく間違われます」
どうせ下っ端な風貌ですよ!
笑うしかない。
そんな二人のやりとりを見て、田口は微笑を浮かべる。
この人は大人だ。
暴れている安齋と比べると、落ち着いて見えた。
楽譜を片付け、ちらばった余計な物品を片付ける。
その間に吉田が打ち合わせ書類を配布した。
むっとした安齋が戻ってきた頃、星音堂事務室は静寂に包まれていた。
「どうだった?安齋」
保住は気軽に彼に声をかける。
蒼だったら怒っている人に声をかけるのは憚れるところだが……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
669 / 869