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87.猛獣使いと猿山4
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「曖昧だった点は大堀と確認してきました。なんとかいけそうです」
「そう。それはなにより」
一同はハラハラである。
また怒られるんじゃないかって。
だけど、安齋はいつもと同じ無表情だった。
彼だって大人だ。
いつまでも怒っているのは大人気ないと思ったのだろう。
咳払いをして、席に座っている職員を見る。
「先ほどは失礼しました。なにせ、ずっと準備を重ねてきた企画なものですから。気が立っていました。今回の企画はみなさんのご協力があってこそのものです。どうぞ、よろしく……」
そこまで言って安齋は言葉を切った。
水野谷が慌てて入ってきたからだ。
「いやぁ~、遅くなった!!ねずみの耳一つなのに、ものすごい金額をふっかけてくるものだから、つい熱くなっちゃって……あれ?」
せっかく落ち着いたところだったのに。
尾形は慌てて、水野谷の言葉を押し込めようと立ち上がったが時すでに遅し。
安齋はじろっと水野谷を睨む。
「あ、え?なに?どうした?」
タイミングが悪すぎる。
言葉を失っておろおろしている職員たち。
大堀も田口も黙ってことの成り行きを見守るしかない。
また怒るのか?
元上司を?
ドキドキしていると、保住が立ち上がった。
「水野谷課長。このたびはお世話になります」
「あ、えっと。ごめんね。遅くなっちゃって」
「いえいえ。遅くありませんよ。我々が急いて早く来てしまったものですから」
彼は安齋の肩に手をあて、「落ち着け」と視線で嗜める。
熱くなっていた安齋は、それで冷静になったのか。
黙り込む。
吉田はびっくりしているようだ。
怒り出したら手がつけられない男なのに。
保住の一言で黙るなんて。
彼は上司として、安齋をすっかり使いこなしている様子だ。
人の上に立つ者の条件。
それを兼ね備えているのだろう。
若いのにすごい。
蒼も感嘆していた。
自分にはない才能だから。
結局、自分は下っ端で使われる身だ。
そう思った。
「さあ。打ち合わせをしましょう。せっかく、こうして一緒に仕事ができるんだ。楽しみで仕方がありませんよ」
保住の一言で、事務室内の雰囲気は軽くなる。
席についた水野谷を見て、安齋は詳細の説明を始めた。
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