アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
87.猛獣使いと猿山5
-
夕方。
市制100周年記念事業推進室メンバーが引き上げていった後のこと。
水野谷は、さっそくねずみの耳の店主に電話で連絡を入れている。
もっと安くするように交渉しているらしかった。
限りある財政である。
少しでも安く。
それが彼のモットーらしい。
「全く。課長も好きだよな~。こういう仕事以外のこと」
星野は背もたれに体重を預けて伸びをする。
「仕事以外って。仕事じゃないですか」
尾形の突っ込みに彼は笑う。
「まあ、そうとも言う」
「でも、課長も課長だよねえ。さっきまであんなに安齋がプリプリしていたのに。もう平然と文化祭に戻ってる」
高田はコーヒーを飲みながらため息だ。
「仕方ないだろう。文化祭はおれたちにしか出来ないことなんだから。市制100周年記念事業のほうは、あちらさんに任せておけばいいのさ」
書類をファイリングした氏家は満足げに言う。
「安齋も、抜擢されて期待が大きいのだろう。古巣にいるおれたちが足を引っ張るんじゃかわいそう過ぎる。みんな、明日は機敏に動いて、余計なことはせず、今日の打ち合わせ通りにやるんだぞ」
「は~い……」
「でも……」
ふと三浦が口を挟む。
「あの安齋って人、本当に獰猛な獣みたいな人ですね。見た目は知的生物なのに」
「そう思う!?」
その話に乗ったのはもちろん、吉田。
「おれもそう思ってたんだよね~」
味方を得たり、と言うところだろうか?
星野は笑う。
「欲望の赴くままに生きているお前に獣扱いされたんじゃ、あいつも終わりだな」
「欲望の赴くままに生きてなんかいませんよ!」
「そうか?眠いときには寝るし。食べたいときに食べてるじゃないか」
確かに。
この中で一番、意思が弱いのは彼かも知れない。
蒼は笑う。
「おい!笑ってんじゃないよ!」
蒼に笑われることが最も腹立たしいらしい。
咳払いをして「すみません」と謝罪する。
「蒼に八つ当たりするな」
「だって……」
おかしな方向に話題がそれそうになった時、ふと尾形が口を開く。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
671 / 869