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88.乱入者登場2
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午前中の仕事を終え、お昼のメロディーが流れる。
本来ならば、ほっとするこの曲も、今では恐怖の音楽に聞こえる。
蒼は机の上に突っ伏した。
「は~……」
「いつものように。10分で食事をして、すぐに練習を始めるぞ」
氏家の声に一同はぐったりだ。
文化祭まで後1ヶ月。
こんな状況がいつまで続くのだろうか?
水野谷はいない。
彼もまた、オケや圭一郎の調整で奔走しているのだ。
彼が一人で頑張ってくれているおかげで、自分たちはミュージカルに専念できると言うわけなのだが……。
自分たちでは音取りが出来ないので、講師に音取り用のCDを作ってもらった。
それを流し、自分たちは読めない楽譜と睨めっこしながら音を確認していくのだ。
慣れていない職員たちにとったら、骨の折れる大変な作業であった。
「吉田さん、半拍遅れましたよ」
結局は、楽譜が読める三浦が指導者になっている。
「え?あ、そう?」
三浦はCDを止め、吉田に楽譜の説明を行う。
彼にこんな特技があったなんて思っても見なかった。
尾形あたりは羨望の眼差しで彼を見ている。
「ここ。魔法使いのほうが一瞬早いんです。ねずみは半拍遅く。じゃないと、一緒になっちゃいますから」
「本当だ」
ふむふむと頷く吉田。
「すみません。もう一回お願いします」
「よし。じゃあ魔法使いのところから」
尾形は頷いて、CDに耳を傾ける。
蒼は一生懸命に楽譜を追う。
本当に暗譜なんて出来るのだろうか?
なんだかめまいがしてきた。
ねずみと魔法使いの掛け合いを聞きながら、大きくため息を吐いた。
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