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90.復活!3
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「まじっすか!?」
玄関を開けて、彼が放った言葉はそれだった。
「お前、いきなり来て、それはないだろう?」
圭は迷惑そうに、玄関先に立ち尽くす高塚を見詰める。
「だ、だって!嬉しいことじゃない!!」
彼は東京土産のシュークリームを抱えて、勝手に上がり込む。
この家に来るのも数え切れないくらいになってきたせいか、すっかり自分の家の気なのだろう。
「おいおい」
けだもも、すっかり馴染んでいる様子で、高塚の足にまとわり付く。
知らない人が相手だと、影に隠れる弱虫猫のクセに。
「今日。病院に行って、どうなるかどうか聞いてくるって言うから、様子を見に来たんだからね。圭くんの具合を心配しているのはおれだって同じなんだから」
確かに。
圭が療養中。
仕事の話は一切なしで、彼は頻繁に電話を入れてくれた。
本当に心配してくれていたのだろう。
自分が怪我をした時の様子を見ても、それはよく分かった。
今回は、自分のわがままのせいでみんなに迷惑をかけていたと思い知る。
これからは細心の注意を払わないと。
「ありがとう。高塚」
素直に感謝の気持ちを言葉にする。
先に居間に入り込んでいた高塚は、狐につままれた顔をしていた。
「どうしたの?圭くん?」
「どうって。ただ、思ったことを口にしただけ」
「嫌だなあ。圭くんから『ありがとう』なんて言われるのは滅多にないから」
彼は恥ずかしそうに笑う。
「笑うところかよ?」
「だって……。蒼ちゃんにはそうしているんでしょうけど。おれは……まだ認められていないのかと思っていたから」
認めるとか、認めないとかの問題ではない。
自分は信頼しているのだ。
彼を。
仕事のパートナーとして。
「バカか。おれはお前のこと。ちゃんと信頼しているから。だから、お前に任せてこうして一ヶ月も悠々と休んだんじゃないか」
一ヶ月の仕事の穴は大きい。
それを、全く感じることなく、療養できたのは彼のおかげと言ってもいいだろう。
きっと、キャンセルやなんかで、方々に頭を下げていたに違いない。
それなのに、その愚痴一つ、圭の耳には入ってこなかった。
だからすごいと思った。
「いやあ。照れるな。おれは自分の仕事をしただけだから」
「だからありがたいって言ったんじゃないか」
高塚の持ってきた箱をさっそく開いて、圭は喜ぶ。
「おいしそうだな!」
「あ、この一ヶ月の間に新しくオープンしたお店のなんだー。今度、圭くんも連れて行ったあげるよ」
「いや、いい」
「なんで!?」
せっかく食いついてきた話題だったから、得意になっていたのに。
肩透かしを食らって、高塚はうろたえる。
「高塚が買ってくればいいだろう?おれがいく必要なない」
「なんだ!それ!?おれはパシリか!」
ぶうぶう文句を言う彼を差し置いて。
さっさとお湯を沸かしに行く。
先に食べたら、蒼に怒られるだろうけど……。
そんなこと言っていたら夜になってしまう。
先に食べてしまおう。
食いしん坊だから。
あればあるだけ自分で食べる気になる蒼。
彼がいなくてよかったのかも知れない。
圭だって、結構、甘いものは好きなのだ。
蒼に負けないくらい……。
やかんをガスにかけながら、笑ってしまう。
お互いがお互いを尊重して、あわせることはない。
そう思っていたけど。
結局、一緒にいる時間が長くなってきたせいで、感化される部分はあるらしい。
「おれ、そんなに食い意地張ってなかったんだけどなあ……」
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