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92.家族で温泉旅行7
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夕飯はちょっとした宴会場だった。
お膳立てをしてくれた有田の計らいで、この宴会場は夜中まで貸切。
食事後も団欒を楽しむ場として取ってくれたようだった。
関口家と熊谷家と対峙するように座り、食事を摂る。
和やかなのは、両親たちばっかりだ。
ただ、いつもはそんなにゆっくりと話しが出来ない、朱里とも話しが出来たので蒼としては充実した時間であったことに間違いはない。
仲が悪いのは陽介と圭の話しなのかも知れない。
啓介はいつの間にか朱里とも話しをしているし。
二人以外はああだこうだと盛り上がったりしていた。
「それにしても。今回は本当にこんな企画を思いついてくれてありがたい話しだね」
栄一郎は日本酒を煽りながら朗らかに笑う。
頬が上気し、いい気分のようだ。
「いやあ。自分も初めてなんだよね。こういうのは。本当に素晴らしいよ!」
大きな声を上げて、圭一郎はむせる。
「圭ちゃん。まだ無理はしないでよ」
かおりは呆れた顔をする。
「嬉しくてね。どうしても声が大きくなってしまうな」
「お互い、駆け足でやってきたらか。本当に。なんだかこういう時間が取れると言うことは幸せだな」
ある程度の人生を歩んできたからこそいえる言葉なのだろう。
蒼は親たちの会話を聞き、ふと思う。
「ねえ、蒼ちゃん。遊びに行こうよ!」
のんびりお酒でも飲もうとしているところなのに。
急に朱里に手を引かれる。
「朱里ちゃん」
「いいじゃん。ね?」
彼女は女友達でも誘うかのように、ぐいぐいっと腕を引っ張る。
「あわわわ」
蒼は根負けをして、腰を上げる。
「あれ?朱里ちゃん、どこに遊びに行くのー?」
啓介は少し据わった目で二人を見る。
「1階にゲーセンあったでしょ?こういう旅館のゲーセンって一昔前のゲームとかあるから好きなんだよねー」
「じゃあ、おれも行こうっと!」
三人がゲーセンに行く様子を見て、陽介と圭も慌てて立ち上がる。
こんなところに二人で取り残されたらたまったものではない。
「お、おー。若い人たちは若い人たちで楽しんでくるよいぞ!」
圭一郎は手をひらひらさせて笑っている。
これが楽しみに行く状況か!?
圭はむーとしたが、はだけた浴衣姿でご機嫌な彼を見て、少しほっとした。
よかった。
生きている。
この男に死なれては困るのだ。
本当に。
「父さんたちは父さんたちで楽しんで。先に寝ていてもいいし」
圭が出て行くのを見送って、栄一郎が苦笑する。
「随分、優しい息子さんだ。圭一郎が父親だなんて想像できないな」
「だろう?」
二人は顔を見合わせて笑う。
「本当。圭ちゃんがお父さんだなんて。なんだか気恥ずかしいわね」
「かおりちゃん、そんなこと言っちゃって。本当は嬉しいんでしょう?」
「まあ、ね」
圭一郎と圭。
二人が仲良くしてくれるのがかおりの夢だ。
ただ、仲良くの質はいろいろある。
べたべたした関係も然り。
つんつんした関係も然りだ。
どっちかって言うと、この二人は同じ音楽家のプライドがあるから。
お互いがお互いを尊重し、いいライバルでいられればいいのだろうな。
同じ職業についた宿命だ。
「そうそう。仲良しが一番よね」
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