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92.家族で温泉旅行12
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結局。
熊谷家、関口家。
それぞれの部屋で過ごし、朝早くにお別れとなった。
熊谷家は病院を抱えていることもあるからだ。
陽介と啓介は自宅に戻って行った。
「今度はきちんと勝負をつけようじゃないか。圭くん」
陽介の言葉に圭も頷く。
「もちろん!負けないから。おれ」
「それまでは蒼を預けておこう」
変に気が合うのだか、なんなのか。
二人は固く握手をして分かれる。
「今度はチビも増えているかも知れないけど。よろしくお願いします」
啓介もぺこぺこと頭を下げて帰っていく。
なんとも賑やかな旅行だった。
両親四人組みは、少し観光をしてゆっくりしてから帰ると言う話しだったので、留学先に戻る朱里を新幹線に乗せるため、圭と蒼は朱里を駅まで送って行くことにした。
「楽しかったねー」
朱里は後部座席でのびのびとする。
「珍しいな。お前がそんなことを言うなんて」
「そう?」
「そうだろう。家族での旅行なんて興味なしだったクセに」
運転席の圭はルームミラーで彼女を見る。
「家族旅行のかの字もなかったからじゃん。別に興味がないわけじゃなかったよ」
「本当かよ?」
「本当です」
朱里は笑う。
「だってさ。家にいるのあたしだけだったじゃん?」
そういわれてみるとそうかも知れない。
圭一郎もかおりもほとんど家にはいない。
自分もそうだ。
いつの間にか蒼と住むようになって。
朱里が一人になってしまうなんてことは考えたこともなかった。
「一人でいるとさ。家族とかって本当に面倒だなって思い込みたいのよ」
「思い込む?」
「そう。だって。現実は惨めな女子高生じゃん。両親はいない。唯一の兄弟のお兄ちゃんも家を出ているし。一人で過ごしているのってあたしだけだよ?友達はみんな、両親とご飯も食べるし、兄弟とも普通に話ししているし。家にいたってつまんないから、彼氏とか作って出かけるようにしてたんじゃん」
「朱里ちゃん」
「でも、やっぱり捨てきれないって言うか。どうしても家族の匂いがする人に寄り付いちゃうんだよね。だから。不倫とかしちゃって。もうだめだめ女だなーって。本当に思って。でも、今はこうして自分の好きなことに取り組むことが出来るようになったからいいのかなって」
「好きなことって。音楽好きだったっけ?」
圭は苦笑する。
「好きよ。大好き!でも、こうも周りにモンスター級の音楽家に囲まれていると、本当に好きなんていえるわけないじゃん」
「確かに」
ここで同意したのは蒼。
「蒼ちゃんなら分かってくれると思っていた!」
蒼は笑う。
「あたしだって負けないからね!お兄ちゃんたちに追いつくように頑張るわ」
「追いつくだなんて」
「よーっし!頑張ろう!おれ、応援するから!!」
「ありがとう!蒼ちゃん」
わーっと盛り上がる二人を見て、圭は苦笑した。
「なんだかんだ言って、関口と熊谷は仲がいいのだろうなあ」
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