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95.蒼、大物に会う2
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あちこち順調に説明し、最後に来た大ホールで、やっと男の顔を見ることが出来た。
50代くらいだろうか?
上質なスーツを着ている。
ブランドの?
蒼なんか見た事もないくらい高そうなスーツだ。
少し白髪の混じっている髪を後ろに流している。
軟らかい視線は、彼が紳士であることが伺えた。
「とてもいいホールですね。さすが、マエストロが指名してきただけのことがある」
「関口先生のことですか?」
「そうです」
男はふと笑って蒼を見る。
「あの。失礼ですけど。キミはどこ出身ですか?」
「え?」
突然?
なに?
「えっと。市内ですけど」
「そうですか。あの、キミの……」
男が再度質問をしようとしたとき、入口から若い男が顔を出した。
「社長!!勝手に歩かれては困りますよ!!」
若い男は息を切らしている。
後ろには水野谷がいた。
「課長?」
「いたいた」
「?」
水野谷は苦笑して、蒼に男を紹介する。
「蒼、こちらは羽根田重工社長の羽根田さんだ」
「しゃ、社長!??」
羽根田って。
あの?
三浦の言葉が脳裏でリピートする。
本当に大企業だってこと。
その社長と話しをする機会なんか、本当に生きている間にあるかないかだ。
蒼はパクパクと口をする。
放心状態だ。
「すみません。課長さん。どうも、私もこの町に住んでいたことがあるんもんで。当時の私と同じくらいの人を見ると声をかけてしまいたくなるんですよ」
彼は大企業の社長らしからぬ(?)笑顔で、蒼に挨拶をする。
「失礼しました。バカにしていたわけではないのだよ。いちいち、名乗るほどの名前でもないのでね」
「名乗るほどのって……そんな。すみません」
「キミのお名前を教えてくれないかな?」
「く、熊谷蒼です」
「珍しい名前だね」
「母が、母がつけてくれたんです」
「そうか」
彼はにこにこして、若い男に視線を向ける。
「そんなに慌てることはないじゃないか」
「困ります!本当に探したんですから……」
男は水野谷にも頭を下げる。
社長が不在で大変な思いをしたのだろう。
なんだか不憫に思えた。
「すみません。では、話しを始めましょうか」
水野谷に案内されて、一同は連れ立っていってしまう。
最後に、蒼に手を振って行った羽根田。
「上になる人って気ままな人が多いのかな?」
公務員とは少し違った匂いがする人。
窮屈な世界で生きている蒼にとったら、少し憧れの存在であった。
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