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96.二人旅1
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研修の日は冬晴れの寒い日になった。
新幹線のホームで待っていると、寝癖いっぱいの三浦が走ってきた。
「すみません!遅くなりました!!」
三浦はキャリーケースを引っ張り、バタバタと走ってくる。
こういうときは蒼のほうがしっかりしている。
彼は苦笑して時計を見る。
新幹線の出発時間に間に合えば問題はない。
まだ新幹線の姿も見えていない状況だから、まだまだ間に合う。
「そんなにあわてなくて大丈夫だよ」
「でも……」
転ばれるよりはましだ。
三浦が到着するのと同時に新幹線がホームに滑り込んできた。
新幹線は指定席だから焦る必要はない。
二人はのんびりと乗り込んで、指定の場所に腰を下ろす。
車でいくよりは早いとはいえ、少し時間がかかる道のりだ。
蒼は買ってきたお茶を出して、三浦にも一本渡す。
「どうぞ」
「え!いいんっすか?」
「いいです」
なんだか職場以外で顔を合わせるなんてめったにないから。
調子が狂う。
いつもの調子に戻さないと。
そう思っていると、隣で三浦のおなかが豪快に音と立てた。
「ぷっ」
「わ、笑わないでくださいよー!」
「ごめん」
蒼は包みを取り出した。
「そうそう。圭が、どうせ三浦も腹空かしているだろうって、これ」
そこには、おにぎりが二つずつアルミに包まれていた。
「え、おれっすか?」
「そうそう」
三浦は瞬きをする。
大丈夫なのだろうか?
いつも自分を見る圭の視線は尋常ではない。
その内、呪い殺されそうなくらい殺気立っているのに……。
その圭が自分におにぎりだなんて。
蒼はにこにこしながらおにぎりをほおばっている。
それをじっとみて固まってしまう。
「どうしたの?大丈夫だよ。作るところ見ていたもの。なにも入っていないよ」
「え、えっと。そういう意味では」
そういう意味なのだが。
蒼はおかしそうに三浦を見上げた。
「大丈夫だって。圭ってあんな感じだけど、そんなに性格悪くないんだよ?」
「はあ……」
三浦はじっとおにぎりを見つめていた。
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