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97.マエストロの復活1
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季節は冬を目の前にしていた。
雪国の冬は早い。
肌寒い風が吹き付ける時期がきた。
また、星音堂職員にとったら辛い季節到来である。
これから先、落ち葉の処理や、雪かきがまっている。
予算もない中で、自分たちがやらなければならないことが、たくさん増えている。
勤務も不規則だし。
厳しい状況に陥っていることは、目に見えていた。
もう2日後には、関口圭一郎の復帰コンサートを控えているから、念入りに掃除の指示が出され、職員たちは年末の大掃除的に掃除をさせられていた。
開催予定は土曜日だったが、自分たちは総出でサポートだ。
高田あたりは張り切っている様子だったが、なにせ、世界の羽根田がバックアップをしての演奏会だ。
星音堂職員の出番はあまりないに等しいと水野谷はいう。
蒼は大変、興味があった。
先日のホールの視察でも、新鮮なものをたくさんみることができたから。
今回も、もしかしたら。
羽根田のマネジメントを見て、なにか学べることがあるかもしれない。
「邪魔にならないようにするなら、人のやっていることを見るのは勝手だろう」
その話をしたとき、星野は苦笑していた。
「本当に、お前ってくそまじめだよなー」
「そんな風に言わないでください。勤勉と言ってほしいです」
「だって、そうだろう?」
それを聞いていた氏家も笑う。
「そういうところが蒼のいいところだろう?星野」
「いいところっていうか、バカっていうか」
「星野さん!」
蒼はふくれる。
「でも、確かに興味がありますよね」
三浦はうなずく。
「世界中で、すごい音楽家たちをバックアップしている企業ですよ?おれも興味あるなー」
「三浦もそう思う?」
「思います!」
研修のおかげかどうか。
水野谷は黙って聞いていて愉快に思う。
研修に行かせた二人は、特に熱心だ。
百聞は一見に聞かず。
二人にとって、研修は有意義だったことだろう。
みんな、なんとか研修に行かせたいな。
そう思う。
「じゃあ、おれから頼んでやろう」
水野谷が口を開く。
「へ?」
「お前たち、みんなが、なにかしらの形で、羽根田のやり方を見れるように。頼んでみよう」
「本当ですか!?」
喜ぶ輩がいる反面。
尾形や吉田はめんどくさそうにしている。
「課長。別におれらはいいですけど」
尾形は余計な仕事はやめて欲しいとばかりに顔をしかめる。
しかし、水野谷は笑い飛ばす。
「そういうな。一日、ここでぐーたらしていると、ますます太るぞ。尾形」
「そういう発言はパワハラなんですからね!課長!!」
一同は笑う。
「お前たちにも経験してもらいたいんだ。星音堂をよくしたいって思っているお前たちなら。きっと学ことが多いと思うぞ」
水野谷の言葉を聞き、氏家もにこにこしている。
反対派の職員は閉口していたが、それは重々承知のことである。
心地よい緊張感が流れる事務室は珍しい。
蒼はよいことだと思えた。
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