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97.マエストロの復活5
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夕方。
本日の練習はほとんど終了だ。
後は、明日の午前中からのゲネプロを経て、夕方からの本番。
いくらプロとはいえ、なかなかハードな流れである。
蒼は一息つくために、外に出た。
「ふう」
本当に大変だ。
甘っちょろい感覚ではいけないんだよなあ……。
そう思っていると、ふと人の気配を感じた。
びっくりして顔を上げると、羽根田章(ふみ)がいた。
いつの間に来ていたのだろう。
「こ、こんにちは!」
「緊張しないで。今日は一日奥川くんについて歩いていたんだって?水野谷さんから聞きました」
「ええ」
「どうだった?」
「どうだったって……」
蒼の隣のベンチに座る羽根田。
「すごいです。彼女は。本当に優秀ですね。一日中、感嘆のため息しか出ませんでした」
「絶賛だね」
「だって……本当にすごいです」
「羽根田の社員がほめられているのを聞くと嬉しいね」
「社長さん……」
彼はにこにこしている。
どうして、自分に声をかけるんだろう?
気にかけてもらっているのだろうか?
こんな大社長に。
「えっと。熊谷くんだっけ?」
「は、はい!」
「君を見ていると、古い友人を思い出す。どうだろう?今日の夜。食事に付き合ってくれないかな?」
「え!?」
「今晩は懐かしいこの地に滞在してみることにしたんだ。ゆっくりする時間もない。今晩だけは、一人で過ごすことを許された身なのだが。こう四六時中、誰かに囲まれて暮らしていると、急に一人になるとさみしくなってしまう。食事だけでも?どう?」
「え、ええ……」
断るわけにもいかないだろう。
仕事だ。
仕事だと思おう。
それに。
なんだか蒼も、この人はいい人だって。
なんだか気持ちを許してしまう自分がいる。
この雰囲気がいいからだろうか?
誰でも受け入れます的な。
社長ってこんな人材なのか?
フレンドリーにしないと商談とかもうまくいかないのかな?
いろいろな疑問がわく。
ぼんやりしている内に、話は進んでいたようだ。
「じゃあ、仕事が終わるころ。またここで」
「は!はい!!」
圭にはなんて言おう。
隠す必要もないよね?
羽根田が姿を消すと、蒼はあわてて携帯でメールを打った。
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