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97.マエストロの復活7
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事務所を片づけて、外に出ると、国産の小さい車が止まっていた。
高級車って感じはしないけど。
あれかな?
きょろきょろしていると、車から手を振っている男がいる。
羽根田だ。
彼は嬉しそうにしていた。
「急に誘って悪いね」
「いいえ。あの。いいんですか?おれで」
「うん。いいの、いいの」
彼は蒼を助手席に乗せると、運転をする。
「懐かしいからなあ。道がわかるかどうか」
「田舎ですから。早々変わりませんよ」
「そう?そうだよね。東京あたりはめまぐるしく変わっていくよね。少し、海外にいて、戻ってくると、景色が変わってしまって。なんとなくさみしい気持ちになるね」
「そうですよね」
蒼は頷く。
「おれも、なんでも新しいものって好きじゃないです。古くてもいいものってたくさんあります」
蒼の意見に羽根田は笑う。
「同感!」
彼は続けた。
「この仕事をしているとね。なにかを生み出さないと利益にならないから。どんどん事業を拡大していくしかない。そうなると、古いものを壊して、新しいものを作り出さないといけないんだよね。だけど」
だけど。
「だけど。古いものを大切にして、そこからなにかをっていう考えは好きだね。そういうとろこから、こういった芸術への投資とか、利益とは関係のないところでの投資っていうのが好きなんだよね」
「だから、社長さんなのに、わざわざ足を運ぶんですか?」
おかしいと思った。
大プロジェクトでもないのに。
大きな企業はとりあえず、こういった事業にも投資をして、企業のイメージアップを図ったりするものである。
そうなると、PR事業になると、社長みずからマスコミに出るわけでもないところに出てくる必要がないのだ。
まあ、明日には、世界各国からマスコミが押し寄せるだろうから、そこに羽根田がバックアップしているというPRができれば、かなりのイメージアップになるであろう。
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