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98.剔抉8
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動揺していた。
夢みたいな出来事に心臓が止まるかと思った。
ドキドキして。
自宅に帰ったつもりだったのに、なぜか熊谷家の前に立っていた。
空に逢ってどうする?
なにを聞くのだ?
羽根田という男を知っているかと問うのか?
それはイコール、自分の父親が羽根田だと知ったということを告げるようなものである。
それでいいのだろうか?
空にそれを突きつけてどうしようというのだ?
わからない。
わからないけど。
どうしようもなくて。
ここにきてしまっていた。
「……」
うろたえていると、ふと声が聞こえる。
「蒼?蒼じゃないの。寒いのに、どうした?そんなところに突っ立っていて」
男は栄一郎。
「父さん……」
「入ったら?母さんに用事?」
「えっと。用事ってわけじゃないんだけど。なんか気づいたら来てしまって」
「夕飯食べていきなさい」
栄一郎に促されて、熊谷家に入る。
一瞬。
別な空間に入ってしまったかのような感覚に襲われた。
それじゃなくても、自分は部外者。
そう思っていた。
栄一郎たちが優しくしてくれているので、少しは緩和されていたところだったのに。
自分の本当の父親が発覚した途端、ここは自分の家ではないような錯覚に襲われたのだ。
めまいがする。
「蒼?顔色が悪いよ」
栄一郎は鋭い。
「だ、大丈夫。父さん。大丈夫」
居間に入ると、空が読書をしているところだった。
夜も遅い。
夕飯も終わって、寛いでいたところだったのだろう。
「雪がひどいかなって外に様子を見にいっていたところだったんだ。そしたら蒼がいて」
蒼と空にわかるように説明をしてくれる栄一郎。
「あら。どうしたの?蒼」
「あの……」
蒼はよっぽど切羽詰った顔をしているのか?
二人は首をかしげて蒼を見ていた。
言葉を失い。
なにを話したらいいのか、迷っていると、ふと空が声を上げた。
「ねえ。蒼。間違っていたら悪いんだけど。本当のお父さんのこと……?」
どうしてそれを……。
空は栄一郎と顔を見合わせる。
その問いに答えたのは意外にも栄一郎だった。
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