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98.剔抉10
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「勘違いされてしまっただろうか」
蒼を見送った栄一郎は不安そうに空を見る。
「蒼に自由に決めてほしいんだ。そして、その結果、熊谷家を選んでくれると本当にうれしいのだが」
「私たちの気持ちを話してしまって、それにとらわれてしまうとあの子のためにならないと思ったけど。逆効果だったのかしら」
二人は顔を見合わせる。
「本当は、どこにも行って欲しくないのに」
「そうだね」
「ただいま」
今日は圭がいない日だった。
真っ暗な室内で。
けだもが一人ちょこんと座って待っていた。
「ごめん。遅くなって……」
言葉を発すると、ふと緊張していた気持ちが緩んで涙が出てくる。
「けだも……どうしたらいいんだろう……おれ」
一人で悲劇の主人公のような気分に陥った蒼は泣くしかなかった。
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