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99.訣別7
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「話して」
「圭。おれ、羽根田の家の子だったの」
「は?」
突拍子もないコメントに目が点だ。
「おれの本当に父さんは羽根田財閥の社長、羽根田章だったって」
「それ、本当なの?」
「本当。母さんにも確認して。父さんも知っていることだった」
「栄一郎さんも?」
「羽根田の家は男の子供がいないんだって。それで、おれ。羽根田の家に行くことになって」
「蒼はそれでいいの?」
「だって!」
だって?
蒼は目にいっぱいのなみだ。
なにか、断れない事情でもあるというのか。
「空さんたちはなんて……?」
「なにも!おれが決めたの。おれが。これでいいの。圭とはお別れだから」
「蒼!そういう大切なこと、どうして一人で決めるの?ここでの時間ってそんな簡単なものなの?」
「簡単なんかじゃないよ!」
「蒼?」
いつまでも話をしていてもらちが明かない。
そう思ったのだろう。
外にいた、岩見が顔を出す。
そして。
羽根田も。
「あんた……!」
圭は羽根田を鋭くにらみつける。
蒼を連れて行く人。
圭にとったら悪者以外のなにものでもない。
「悪いね」
羽根田はそういうと、蒼の手を引く。
「蒼!!」
蒼は小さくうなずいて、そして圭を見た。
「ごめんね。今までありがとう」
圭の手を振り払い、蒼は羽根田に連れられて外に出る。
けだもと圭は慌てて外に飛び出す。
なんだろう。
ざわざわした。
今までとは違う。
なんだか。
もう、今、蒼の手を放したら。
本当に会えなくなってしまうのではないか?
そんな恐怖に捕らわれた。
「蒼!!」
圭は手を伸ばすけど、蒼がそれに応えるわけもなく。
慣れた感じの岩見のリードで、スムーズに蒼は消えて行ってしまった。
あっけないとはこのことだ。
けだもと一緒に茫然としている圭。
言葉を失う。
どうしたらいいのかまったくわからない。
思考の整理もつかない。
蒼が消えてしまうなんて。
今回は、本当に会えなくなる。
そんな気がしてドキドキした。
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