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101.素性4
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中は素晴らしい作りだった。
それこそ、ドラマのセットみたい。
中央に大きな階段があって……宝塚のセットみたいって思っていた瞬間。
一階の右脇からまるまるした女性が出てきた。
「あら!あなた!いらっしゃったのね!!」
彼女は、花柄の派手なワンピースにショールを羽織っている。
ふくよかで、抱き着いたら弾かれそうな感じがした。
「あ、あの……」
「熊谷蒼さんね?」
彼女は瞳を細めて蒼を見上げる。
身長も低い。
蒼が見下ろす程度だから、140㎝台だろうか?
「私は羽根田の妻の美紀です」
いきなり奥さん!?
蒼は緊張するが、彼女は上から下から蒼を見る。
「うん!かわいいわね!あなた」
「でしょう?」
羽根田はにこやかに蒼を見ている。
「あの。本当に、このたびは……おれ、あの」
「わかる、わかる。言いたいことは分かるわよ!」
彼女は朗らかに笑う。
「昔の彼女の子供で……それが、今の妻のいる家庭に来て大丈夫かどうかってことでしょう?」
「美紀はなんでもお見通しだね」
「そ、その通りです」
羽根田はあきれている。
「うふふふ。本当に、お母様に似て奥ゆかしい子なのねえ」
「母を知っているんですか?」
「いいえ」
蒼は拍子抜けだ。
思わず羽根田を見る。
彼は首を竦めて笑っていた。
「ただ……」
「……」
「夫から話を聞くと、そういう人なのじゃないかと思って。私との縁談が嫌で、あちこち遊びまわっていた時に、本当に素敵な人に出会ったって言っていましたわ」
正直に言うものである。
そんなこと言われて嫌じゃないのかな?
蒼は首をかしげる。
「この人と私の結婚は、家同士の事情です。この人だけだと思ってます?素敵な人が当時いたのは……」
あれ?
ってことは?
「私だって。将来を共にしたい人くらい、いましたのよ?当時は……」
そうか。
大きな家。
歴史のある家に生まれた人の宿命なのかな?
好きな人と一緒になれないってこと。
この日本でもある話なのだなって蒼は思った。
「本当は、私たち。結婚当初に本当のことを打ち明け合っていましたの。だって、秘密を持っての夫婦生活なんてつまらないじゃないですか」
「そ、それはそうですけど……」
「このお嬢様は昔から奔放であらせられるのです。昔昔の華族の娘さんだからね」
羽根田は少しおどけた口調で口をはさむ。
美紀は「あなた!」と少し睨んでから、蒼に視線を戻す。
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