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102.社会人1
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時間があれば、せっせとネットで情報収集をしていた。
英語なんか苦手だ。
辞書を片手に。
蒼の痕跡がないか。
星野はネットを見ていた。
「だから!篠崎。そこはこうだって」
三浦の少し苛立った声に顔を上げる。
篠崎は申し訳ない顔をしていた。
「三浦。優しくしてやれ」
高田が苦笑している。
「すみません」
三浦は荒れている。
そんな時に、下についた篠崎が不憫でならない。
三浦が荒れている原因はなんとなくわかっている。
自分の心の整理がついていないから。
似たタイプの彼に八つ当たりしているのだろう。
見え見えだ。
単純で。
でも、篠崎がかわいそうだ。
「おいおい。三浦。ちょっと」
星野は腰を上げて、三浦を呼ぶ。
「吉田。篠崎の見てやれよ」
「はーい」
吉田は手を出したくてうずうずしていたのだろう。
すっと席を立って、篠崎のところに駆け寄った。
みんな三浦の指導にはやきもきしているのだ。
三浦はつまらなそうな顔をして、星野と一緒に外に出た。
初夏の香りが漂ってくる。
新緑の星音堂はさわやかだった。
星野は煙草を片手にベンチに座る。
「なんっすか。星野さん」
「なんっすかじゃねーだろう。三浦」
「……」
星野の横に座った三浦は閉口する。
「お前さあ。篠崎に八つ当たりしちゃダメだろう?」
「八つ当たりなんてしてないっす」
「しているだろう?怒るところか?あそこ」
さっきの場面のことである。
「……」
「蒼のことでイラついてんのはわかるけど、あいつに八つ当たりしちゃかわいそうだぞ?」
「……」
煙をふかして空を仰ぐ。
「……わかっていますよ。最低な男だって」
三浦がぽつんとつぶやく。
「三浦……」
「どうしたらいいんですかね?おれ」
「……それは自分で考えるしかねーけど」
「ですよね」
「……」
今度は星野が黙る番だ。
「篠崎の奴。お前にいくら怒られても、なんとか答えようと頑張っているぞ。蒼とは違うんだから。別に考えてやれ。おまえの中の気持ち、押しつけんじゃねーぞ」
「すみません」
タバコを灰皿に落として、星野は席を立つ。
「一人で勝手に悩んでるのはいいが、迷惑かけんじゃねーよ」
「すみません」
落ち込んでいる三浦を擁護する言葉はいくらでもかけられるけど。
そういう訳にはいかない。
篠崎が不憫に思えたから。
少しきついかな?と、思いつつ、厳しい言葉をかけてしまった。
吉と出ればいいんだが。
「最近の若いやつは難しいな……」
自分のことに思いを馳せつつ。
星野は事務所に戻った。
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