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102.社会人6
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とんだことになってしまったと思う。
大騒ぎにしてしまって申し訳なかった。
逆に、朝からちゃんと休んでいればこんなことにならなかったのに。
星音堂の側の総合病院によって、それから、多少の食糧を買って、自宅まで送ってもらった。
その間、三浦はいつものイラついた感がなく、なんとなくよそよそしく思われた。
「すみません。おれのせいで」
何度も謝る。
だって、彼にはそれしかできないのだから。
だけど、三浦は「そんなことないよ」の一点張りだった。
自宅の中までやってきた三浦。
このアパートに人が入るのは初めてに等しい。
今朝も体調が悪く、そのままばたばた出てきてしまったので、いつも以上に乱雑になっている。
それでなくても、人がくる予定もないから、整頓なんて言葉はなかったから。
なんだか気恥ずかしかったが、体調も悪いので、そんなこと、構っていられる場合ではなかった。
「お前の部屋。結構男臭いな」
三浦の感想に顔を赤くする。
「すみません」
「だから」
三浦は苦笑する。
放り出されている高校のジャージを見て笑ってしまったのだ。
「ちょ、それは……」
三浦はベッドの上に放りだされているジャージを抓んで苦笑している。
「高校のジャージ?」
「……楽なんです。一番。しっくりくるっていうか……」
「篠崎って面白いな」
彼はそういうと、きょろきょろして、冷蔵庫に買ってきたものを入れる。
「早く着替えろよ」
「は、はい」
篠崎はもさもさしてジャージに着替える。
この姿を、まさか、三浦に見せるようになるなんて。
恥ずかしい。
「すみません」
何度も、何度も謝っているので、三浦はあきれる。
「お前ね。別に悪いことなんかしていないだろう?」
三浦はベッドに腰掛けている篠崎の前に座る。
いつもは見下ろされているのに。
自分が見下ろすようになると、なんだか恥ずかしかった。
「社会人だから、体調管理しろとか思っているんだろうけど。おれたちだって人間なんだから。いつ風邪引いて、具合悪くなるかなんてわからないんだよ」
「でも……」
でも、この風邪は自分の不注意だということをよくわかっているから……。
「でもとかじゃないの」
三浦は篠崎の頭に大きな手を乗せる。
「一人で心細いと思うけど。夜。また見に来てやるから。ね?」
なんだか、どっきりしてしまう。
顔が赤くなった。
「……」
「なんか食べたいのとかあったらメールね」
彼は勝手に、篠崎の携帯と自分の携帯とでアドレスのやりとりをする。
手早い。
さすがだと思う。
「じゃあ、おれ。仕事に戻るから」
「すみません……」
にっこり笑顔を見せて消える三浦。
篠崎はぼんやりと彼を見送っていた。
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