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103.それぞれのこと5
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「また。こっそり。圭さんのところに行ったんですか?」
昼食時に、奥川にため息を吐かれる。
「だって……」
「仕事に差し支えない程度にしてくださいよ」
「すみません」
怒られ怒られの昼食は、味気ないものだ。
こちらの食事も飽きてきたし。
「今日は少し余裕があります。午後の出発は二時になりますので、それまでは昼食を召し上がりながらゆっくりしてください」
余裕って。
もう1時を目の前にしての時間。
結局、1時間くらいしかないじゃないか。
それに。
この食事!
もう耐えられない。
蒼はバンっと立ち上がる。
「蒼さん?」
「ちょっと。もう我慢できない……」
「蒼さん!」
蒼は、ばたばたと部屋を出て、廊下を一直線に走る。
尋常ではない。奥川はあわてて追いかけた。
もう!
美味しいの……。
美味しい……。
「日本食が食べたい!!」
蒼がやってきたのは厨房である。
厨房で片づけをしていた料理人のおばちゃん二人はぽかんとして蒼を見た。
『貸して!』
蒼はむうむうとなって、冷蔵庫を覗いて、自分の好きな食材を引っ張り出す。
「蒼さん……。気持ちは分かりますけど……。日本特有の調味料がここにはありませんよ?」
入口にいた奥川は呆れている。
「は!そうだった!!」
「準備しておきましょう。そこまで思い詰めているとは思いませんでした。わたしのミスです」
「そんなことありません」
なんで奥川のミスなのだ。
蒼は膨れる。
心の内まで彼女に管理してもらうなんて。
これは蒼の問題。
別に関係ない。
蒼はぶーっと膨れたまま、厨房を後にした。
取り残されたおばちゃんたちは顔を見合わせていた。
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