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105.恋を患う1
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星音堂は、毎年恒例の文化祭の準備で忙しくなっているところだった。
もう8月である。
本番まで2か月だ。
今年のテーマは……。
『不思議の国のアリス』
なんでこれなんだろうか……。
キグルミとかのほうがまだましだ。
毎回、テーマは水野谷が決定してくるが、どういう趣味をしているのかちっともわからない。
段々、手札も増えているのだから、少しは前のをほじくり返してもいいのではないかと思うが……。
同じものの繰り返しは嫌らしい。
どういうこだわりなのだろうか……。
星野は台本と一緒に渡された楽譜を見て、ため息を吐く。
今年の配役は決定スミ。
星野はチェシャー猫。
ひねくれていて自分に合っているかもしれないが。
主人公を任された吉田がてんてこ舞いのようだ。
まさか、新人の篠崎にやらせるわけにもいかず。
彼がやるハメに。
蒼がいたら蒼になるのだろうか?
毎年、主役というのもつらいだろうし。
主役は持ち回りだろう。
自分に来ないうちに、こんな企画はなくなって欲しいものだと思う。
合唱部だった、篠崎は楽譜を読むのが早い。
三浦といいコンビだ。
吉田は二人にレッスンされて、猛特訓中。
蒼が見たらどんな顔するだろうか?
こっそり見に来てくれたり……そんなことはないか。
なに考えてんだ。
星野は自嘲する。
まさか、自分がこんな甘いことを考えるなんて。
笑ってしまった。
「それにしても、今回の楽曲も難解だな」
氏家や高田も苦戦中のようだ。
「本当だ。年々、力が入っているように思えるのは気のせいだろうか?」
ふとった白兎役の尾形は言葉もない。
「おー。またやってますねー。文化祭ですか?」
そんな雰囲気なんかお構いなしに、能天気な声が響く。
振り向かなくてもわかる。
「関口!」
一同は顔を上げた。
「お久しぶりです」
「これ、お土産」と出した包みを一番に受け取るのは、やっぱり尾形だ。
食べ物だって知っているからだ。
星音堂に食べ物以外を持ってきても無意味だということをよく知っているからだ。
「元気だったのか?」
「久しぶりのここはいいですね」
「その後はどうだ?」
「あっちはどうなの?」
一斉の質問に、彼は苦笑する。
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