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105.恋を患う3
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圭は1か月ほど日本にいるから、ちょこちょこ顔を出すといって帰っていった。
これから、実家に行くという話だった。
休みのときでも忙しいのだろう。
なにせ、日本での活動も行いたいという男だ。
休暇といえど、こっちでも仕事がある様子だった。
圭が帰ってから、三浦は寡黙だった。
蒼のことをまた、思い出したのだろう。
星野は内心、もどかしい気持ちになりつつ、ほじくり返すわけにもいかないので、黙っていた。
ところが。
三浦だけでなく、篠崎もおとなしい様子に気が付いた。
若い子。
蒼くらいまでだったら何を考えているか一目瞭然だったが。
篠崎くらいになってしまうと、本当になにを考えているのか、皆目見当もつかない。
かといって、こっちもほじくり返すわけにもいかないし。
放っておくしかあるまい。
星野はパソコンに視線を落とした。
その日の遅番は三浦と篠崎だった。
彼も一人前に遅番ができるようになってきたいのだ。
二人は戸締りをしたり、夜間利用の対応をしたりしていた。
仕事が落ち着いたのは20時を過ぎたあたりだった。
「少し休憩しようか」
三浦の言葉に、篠崎はうなずいて、コーヒーを入れた。
「どう?遅番も慣れてきたね」
「慣れっていうか。でも、なんとなく、仕事の内容は見えてきました。ただ、まだまだ自分の物ってことにはいきませんけど」
「それはそうだ。数か月で一人前になられたら、おれの仕事なくなっちゃうもんね」
三浦は苦笑する。
「それより。三浦さん」
「ん?」
篠崎はそそっと言葉を続ける。
「あのー……。今日、来ていた関口さんて人……」
「ああ。あの人が、前から話題に上る、ヴァイオリニストの関口圭だよ」
「有名ですよね。テレビで見たことある」
「でしょう?今はヨーロッパを中心に活動しているから、あんまり見かけないけど」
「ええ」
「小さいころから、ここの星音堂に通ってきていて、星野さんたちも知り合いなんだってさ」
「そうなんですか!」
篠崎は感心する。
自分も、ここが好きだけど。
同じく、この場所を気に入っている人がいるのだとびっくりしたのだ。
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