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106.憂鬱な恋2
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三浦が選んだ店は小さい居酒屋だった。
客はサラリーマンばかり。
平日だからか?
篠崎はなんだか落ち着かなかった。
「ビールでいい?」
「はい」
なんだかぎこちない雰囲気で飲み会スタートだ。
最初の数杯は、ぽつぽつとお互いのプライベートの話や仕事の話をするが、なんで篠崎が呼ばれたのか彼は三浦の意図がよくわからなかった。
だけど、話をしていく内に、どうやら星野からつつかれたのではないかと、思うようになってきた。
酒の勢いも手伝ってか。
よそよそしかった雰囲気は少しずつ緩和されていく。
これが日本固有の飲みニケーションの威力か。
「だから。いい?篠崎は遠慮しすぎなんだってーの」
三浦はそういう。
そういわれても。
「でも、おれ。新人ですし」
「いい?遠慮するのと、謙虚でいるのは違うんだぞ?」
彼は偉そうなことを言い始める。
三浦も相当酔っているらしかった。
「いい?遠慮っていうのは、人と人との間に隔たりを作るものだ。遠慮がないのも考え物だけど、もう数か月もここにいるんだから、少しはみんなと距離を縮めないとダメだ」
「距離を縮める……?」
「そうそう」
三浦は続ける。
「新人だろうが、なんだろうが。お前はもう、星音堂の仲間になったんだから。そういうつもりでいないと。いつまでも『新人ですう』『なにも分かりません』じゃあ、ダメな訳。ただ、遠慮なさすぎもだめだ。いつでも、みんなと仲良くなっても『自分は新人』新人は、なにをしなくちゃいけない立場なのか?っていうのを見失わなければ、みんな受け入れてくれるのだ」
なんだか意味が分からない。
遠慮と謙虚ってどう違う?
なんだかわからない。
篠崎は困った顔をしていた。
「わかる?」
念を押すように、三浦はずいーっと篠崎に詰め寄る。
なんだか距離が近くなるとドキドキした。
「す、すみません。わかりません」
「かーッ!本当に頭いい子なのかね?なんで分からないかなー……」
ぶつぶつ文句を言われても困る。
「だから!」
三浦は続ける。
「おれたちに遠慮はいらないってことだよッ!」
遠慮はいらないって言われても……。
分かっている。
みんな自分のことを受け入れてくれることくらい。
だけど、みんな大先輩だし。
なんとなく、入っていいのかどうか気おくれしているだけなんだけどな。
それに。
三浦のこともあって、自分に自信がない。
ただ、それだけのこと。
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