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106.憂鬱な恋3
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「み、みんながいい人だってことは分かっているんです」
「じゃあ、なんで?」
「お、おれの問題で。自信がないっていうか。昔から、自分の意見とか思いとか、人に話すのが苦手で。なかなか思う様に伝わらなくて。間違って伝わってしまうのであれば、黙っていたほうがいいのかなって……」
「そんな悲しいことを言うなよ。確かに、コミュニケーションの大半は、言語じゃないっていうけど。おれたちは人間なんだぞ?言語で表現しないでどうすんだよ?」
「でも」
「でもじゃないんだって。みんな、お前がどう考えているのか知りたいって思っているんだから」
自分がどう考えているかなんて、言える訳ないじゃない。
それに。
三浦は?
みんなって三浦は入るの?
自分に興味ある?
みんなに背中を押されたからこうして飲み会に誘っただけなんだよね?
自分のこと、どう思ってくれているの?
篠崎は、なんだか胸がきゅんとして苦しく感じられた。
「そ、そんなこと言ったって。三浦さんだって。大切な人だったんでしょう?なんでその人のことを話しないんですか」
三浦は面食らう。
なんの話なのか。
頭の片隅でわかっているのに、認証したくないのだ。
「な、なにを……?」
「前にいた人のことですよ。関口って人が来たとき、わかりました。前にいた職員の人のこと。大切に思っていたのでしょう?でも、それってちゃんとお話ししていたんですか?」
「そ、そんなこと。お前には関係ないだろう?」
三浦はなんだか動揺してしまう。
まさか、篠崎に指摘されるとは思ってもみなかったからだ。
目が泳いでいる。
図星だ。
三浦はコミュニケーションには言語が大切だといった。
それは分かる。
だけど。
その言語が苦手だからこそ、篠崎の非言語を読み取る力は長けている。
だから、きっと。
三浦のちょっとしたしぐさでいろいろなことが分かってしまっているのだ。
あの時の辛そうな顔。
あれを見たら、きっと三浦にも心残りのなにかがあるということは明白だった。
自分は打ち明けていたのだろうか?
それとも、振られた?
それは分からないけど。
人の心の中に踏み込むなんて失礼なことだってわかっているけど。
でも止められない。
「関係なくないです!」
篠崎は三浦を見る。
今度は三浦が視線をそらす番だ。
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