アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
107.憂鬱な恋の行方5
-
「篠崎はすごいって思ってから。それからお前のことをいろいろ考えてみたんだ」
「え?」
「最初は新人が来たーって思って。頼りなさそうだなって思って。でも、おれなんかよりしっかりしていて。うん。篠崎はすごいって。そんな篠崎がおれのことを好きだって言ってくれて。嬉しいことだって。ただ、おれの気持ちの整理がつかないのに、篠崎と付き合うなんてことになったら、きっと。きっと傷つけてしまうような気がして」
じゃあ、どうするの?
篠崎は三浦を見る。
彼は、まっすぐに視線を向ける篠崎をじっと見返した。
今までだったら、すぐに目をそらしてしまう彼だったのに。
「おれ。なんとかして蒼ちゃんに自分の気持ちを伝えてみようと思う。ただ。蒼ちゃんがどこにいるのか。恋人の関口さんですら知らないことなのに。このおれが蒼ちゃんに気持ちを伝えられる日がいつになるのか全く分からないけど。それが一年でも、一日でも、一分でも、一秒でも短くなるようにおれも頑張るから。だから……」
だから?
「待っていてくれない?」
待つ?
「身勝手なことは分かっている。だけど。本当に真剣にお前のことを考えていきたいと思っている。篠崎がおれと向き合ってくれようとしているの。よくわかる。だけど、待たせるのって本当に迷惑な話で。でも、今のおれの気持ちはそれで。だから。篠崎が嫌ならそこで断ってくれてもいいから」
他から聞いたら身勝手な話に聞こえる内容だが、篠崎からしたら、三浦の精一杯だということがよくわかる。
好きだから。
余計によく捉えてしまうのかもしれないけど。
だけど。
本当に待っていてもいいような気がしてしまって。
待っていて、三浦の恋が成就してしまったらどうする気なのだろうか?
篠崎はそんなことも考えつつ、一生懸命に考えている三浦が愛おしく思えて、つい「待っています」という答えを出してしまうのであった。
「待っていますよ。三浦さん」
なんてお人よしなのだろう!
そう思っても仕方がない。
だって、今の自分の気持ちなのだから。
「本当に申し訳ない。なんだか、おれのほうが迷惑かけ通しで。ダメ人間だな」
「いいえ。そんな風に思わないでください」
笑顔を見せる篠崎を見て、三浦はなんだか心の奥がうずくのを感じる。
この気持ちってなんなのだろう?
自分に好意をもってくれる人だから特別に思えるのだろうか?
いや。
そうではないのだろうか?
このときの三浦にその答えは導き出せない。
だけど、なんだか。
篠崎のほうが大人に見えた。
そして、彼が確実に自分の中で他の人とは違う立ち位置になったのだ。
三浦はそんな気がしてならなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
818 / 869