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112.圭の休日4
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会場はオペラハウスの名残を残す、ヨーロッパにはよくあるような劇場型のホールだった。
ただし、規模はそんなに大きくない。
巨匠の復活ということもあって、いつもは満席になることもないようなホールが、人でごった返していた。
普通だったらチケットは取れなかったのかもしれない。
正面入り口を入り、赤い絨毯の敷き詰められているロビーを横切って2階に上がる。
知り合いなどいるはずもないと思っていたが、遠くにレオーネとブルーノを見つける。
声をかけるかどうか迷ったが、この気分に水を差したくないと思い、そのまま素通りする。
開演数分前。
随分、のんびりしていたと思う。
案外、時間がないのだ。
レオーネと話していたら長くなりそうだし。
あたりを見渡す。
有田や圭一郎は見当たらない。
ルルの知り合いだし。
ビップ席にでもいるのだろう。
とはいいつつ、自分だって結構いい席。
扉の上の番号と、チケットの番号を確認して、やっとの思いで席を見つけた。
こんな個室に自分だけなんて、贅沢な。
席に座ってしまうと、どうしても隣の人の雰囲気が伝わってしまう。
息遣い一つとっても、気になりだすと困るものだが。
個室で一人は、本当に幸せだ。
思いっきり堪能できるのだ。
圭は夢のような出来事だと思いながら、扉を開けた。
今回ばかりは圭一郎と有田に感謝。
そう思って、一歩足を踏み入れる。
ホール内はすでに照明が落とされていて、ルルの出番を今か今かと待ち受けているようだった。
やばい。
急いで、中に入って……。
びっくりした。
先客がいたのだ。
相手も、自分が入ってくるなんて思ってもみなかったようで、びっくりした様子で椅子から立ち上がった。
部屋を間違えた?
暗くて相手は分からない。
『失礼!』
圭はあわてて、扉から外に出る。
そして、チケットの番号と部屋番号を確認した。
しかし。
「?」
合っているようである。
誰だ?
ここでいいはずなんだけど。
一人だと思っていたのに。
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