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112.圭の休日6
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ルルの復活リサイタルはあっという間の時間だった。
ブランクを感じさせない気迫のある重い演奏。
かと思えば、軽く陽気な彼の演奏は会場を和ませた。
圭はあっという間の1時間半を堪能し、傍に蒼を感じられる幸せに浸っていた。
リサイタルを終え、圭は蒼を見る。
彼は恥ずかしそうにしていた。
よそよそしい。
「どうして、蒼がここに?」
「……。奥川が。聞いておいたほうがいいリサイタルがあるからって。久しぶりにお休みをくれて。今日は一人でのびのびできる時間をもらって、なんだか変な感じがしてたんだけど。まさか、圭がくるなんて思ってもみなくって……」
「奥川って……」
「おれの秘書をしてくれている女性」
秘書?
蒼に秘書?
圭は吹き出す。
「な、なんで笑うのー?」
「だって。蒼に秘書だなんて……」
「お、おれだって変な感じなんだけど……」
蒼は顔を赤くしてうつむいた。
「変わらないね。蒼」
「そ、そういう圭だって……」
蒼はちらっと圭を見る。
じーっと凝視されていることに気付いて、はっと視線を外す。
「会ったらさ。怒ってやろうって思っていたのに……」
「思っていたのに?」
「なんだか。それどころじゃないっていうか!」
圭は嬉しそうに蒼を抱き寄せる。
「わわ!!」
「おれのこと嫌いになってた?」
「な、なるわけないじゃん。……ずーっと。ずっと圭のことばっかり考えてたよ……」
声は途切れそう。
「おれもだよ。ずーっと考えてた。蒼のことばっかり考えてた」
「圭……」
「どう言ったらいいのかわからないよ。蒼。今の気持ち」
言葉に表せないくらいのこの歓喜。
「おれ」
「ん?」
蒼はそっと圭を見上げる。
「おれ……」
蒼はそう言って涙を落とした。
蒼も同じ気持ちでいてくれるのだろう。
圭はそれだけわかれば十分だった。
ぎゅーっと抱きしめて。
そして彼の手を引く。
「今晩は時間あるの?」
「う、うん。今晩はオフ。側のホテルとってて」
「じゃあ家にきなよ」
「え、いいの?」
「いいに決まってるじゃん。けだもも待ってるよ」
「!」
蒼は嬉しそうに笑った。
「うん!」
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