アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
113.変革のとき1
-
クリスマス前。
星音堂に恐れていた事実が突きつけられた。
その日。
水野谷は朝から、本庁に呼ばれていた。
職員たちはなにごとかと噂していたが、どうせ人事の話くらいだろうという話題に落ち着いていたところだったのだが……。
昼前に帰ってきた彼は、渋い顔をしていた。
どうにも好ましくない話題の様子。
彼がいつ、その話題を切り出すのか。
職員たちは気が気ではなく見守っていたが、彼は自分の中に納めておくこともできない様子で、帰ってくるなり口を開いた。
「悪い。仕事を中断しておれの話を聞いてくれるか?」
彼の言葉に、職員たちは待っていましたとばかりに彼を見た。
「みんなには、数年前から話をしていたと思うが……」
彼の切り出した言葉は、職員たちにとったらショッキングな内容であった。
「星音堂が、とうとう市から切り離されることになった」
一同は、来るべき時が来たかと、息をのむ。
「予定では、来年4月より、民間への移行に切り替わる。その前に、お前たちに決めてもらいことがある」
「市役所職員であり続けるのか、ここに残るのか……?ですね」
星野の言葉に水野谷はうなずく。
「本来であれば、我々は地方公務員としてここにいるから、市役所への異動もあり、役所に勤務という立場だ。だが、星音堂は、異色で、ここに来ると何年も異動もなく、いつの間にか星音堂の職員であるがごとく仕事をこなしていかなければならなかった」
確かに。
異動がないなんて前代未聞だ。
「星音堂が民間への移行をすることで、否応なしに、お前たちは本庁の人事課の指示に従い、この施設を撤退しなければならない。独立行政法人ともなれば別だが、今回の場合、完全に民間に移譲することになる。よって、ここに残るということは、公務員を退職しなければならないということだ」
水野谷の言葉に、一同は緊張が走る。
「ここを明け渡して。おれたちは撤退。それが常識だが、なにせ何十年も勤務した職員もいる。愛着があるだろう。お前たちにはよく考えてもらいたい。公務員として本庁に戻るか、退職してここの職員となるか。新しい民間企業は内定しているとのことだ。そして、そちらからも、現職員の継続については歓迎との回答が来ている。まあ、一から始めるよりは、慣れている職員を中心に経営していきたいという思いがあるとのことだった」
「いつまでに返答すればいいんですか?」
高田の質問。
「正月明けだ。退職して、民間に入職してという面倒な手続きはこちらで行うので、安心するように」
「安心って言っても……」
地方公務員と民間企業ではどう違うのだろうか?
不安だ。
三浦や吉田は顔を見合わせている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
856 / 869